第32章 農業生活三十日目 前編
「ん?あ、莉亜・・・アレか?リヒトのは私だけが知っていればいいって言いたいのか?可愛いとこもあるんだな。」
私はローランに向かって、目を皿のように細めた。途端に、ローランの顔が引き攣る。そして、何故かリヒトは顔を赤くしていた。何故?
「ローランさん、正しいものをなるべく早くお願い出来ますか?」
「わ、分かった。直ぐに取ってくる。」
脱兎の如く、帰って行ったローランを見送る。が、いきなり目の前が暗くなり、身を屈めて私の視線とかち合うリヒトの瞳。思わず後退りかけたが、それをリヒトの腕で引き留められる。
「今、見たい?」
何がなんて、聞かなくても分かる。顔を横に振ると、リヒトは少し思案して、また口を開いた。
「触りたかった?」
半泣きになりながら、忙しく顔を横に振る。またしても、思案顔。
「あぁ・・・莉亜の前だけで、僕のふんどし姿を見せて欲しかった?」
もう、無理!!顔から火が出そう。両手で顔を覆うと、リヒトの手によってそれを剥がされる。
「リ、リヒトは・・・私にあんな面積の少ない水着を着せたいの?」
リヒトの手が、私の頬に触れたまま動作が止まる。
「ローランさんが来たら、僕がちゃんと痛い目に合わせておくから大丈夫だよ。」
どうやら、正しく理解して貰えたようだ。そんなことを思っていると、指をバキバキと鳴らしだしたリヒト。笑顔なのに、目だけは笑っていない。
「た、正しい水着を確認してからでいいからね?」
「正しい水着・・・うん、それもそうだね。」
コロッと態度が変わり、テラス席に座り私を膝の上に乗せるリヒト。
「ねぇ、リヒト。ローランさんって強いって言ってなかった?私はリヒトが怪我するのは嫌だよ。」
「怪我?どうして僕が怪我するの?あぁ、一思いにヤッて欲しい?」
薄暗い目をしたリヒトに、ブンブンと顔を横に振る。もう、下手なことは言わないでおこう。ローランと比べたりなんかする言葉を吐いたら、後が大変な気がする。
リヒトの体に身を預けると、しなやかな手が私の髪を撫でる。そして、スリスリされてる。顎を掴まれ、顔を上げられる。当たり前に近付いてくるリヒトの顔に、私は目を閉じた。
イチャイチャとしていると、フと思い出す。
「リヒト・・・準備は?」
「ん、大丈夫だよ。お昼からカミルも来るから。だから・・・もう少しだけ莉亜を頂戴。」