第32章 農業生活三十日目 前編
二人でテラスで食事した後、元気に見回りをしてから畑作業だ。リヒトとは、カミルが来るまでお店の下準備の為に別作業となった。
すっかり、夏仕様になった畑を見渡しホクホク顔。今日は、夏の花の種蒔き。すっかり板についた鍬で、畝を作っていく。向日葵は必須だし、食べる方としても欠かせない。
「お~いっ、莉亜!!今日も頑張ってるな~。」
訪ねて来たのは、ローランだった。何やら、大きな袋を手にしている。ローランに駆け寄ると、満面の笑顔でその袋を手渡された。
「これは?」
「水着に決まってるだろ。姉さんから預かって来た。リヒトの分も入ってるらしいからな。見てみてくれ。」
すっかり水着のことなんて忘れていた。テラスへと行き、袋から水着を取り出した。そして・・・暫し、呆然。
「ローランさん・・・これはどういう事なんでしょう?」
こめかみに怒りマークが、浮かんでいると思う私。その時、リヒトが家の中から現れ私が手にしている水着を見て同じ様に怒りマークを浮かべていた。
「ローランさん・・・これはどういう事なんでしょう?」
リヒトも同じセリフをローランに投げかけていた。超派手な真っ赤なビキニと、ふんどしに憤慨する私たち。詰め寄られるローランさんはと言うと、少し考え込んだ後、何かを思い出したような顔をした。
「あぁ、ウチの分と間違えて持って来た。」
「「えっ?」」
リヒトと声がハモる。今、何って言った?ウチのと間違えて持って来たってことは・・・これは、ローランさん家族が使うの?
「嫁は赤が好きなんだ。だから、俺のも赤にしたんだけどな。お揃いでいいだろう?」
「ローランさん・・・これ、付けるんですか?」
リヒトが頭を押さえながら、尋ねている。
「あぁ、カッコいいだろう?」
どうやら、冗談ではないようだ。そうか、ローランは自信家なんだな。うん、そうか。私はリヒトに、これは拒否して欲しい。目のやり場に困る。
「リヒトもどうだ?」
「僕は遠慮します。」
「何だ、体に自信がないのか?」
嫌々、リヒトを煽らないで欲しい。
「そういう意味で遠慮している訳ではありません。その面積に収まるかが問題なんです。」
「お~、大きく出たな。じゃあ、今度俺のと比べてみるか?」
「や、止めてくださいっ!!何で、リヒトがローランさんに見せないといけないんですか。」