第31章 農業生活二十九日目
食事の後、水田の稲の成長を眺めつつ、風に揺れるその光景を眺めていた。
「緑の絨毯みたいだね。一見、寝転んだら気持ちよさそう。」
「そうだね。実際寝転んだら、大変なことになっちゃうけど。でも、こんな緑の所で寝転がれたらいいだろうなぁ。」
「お昼からの用が終わったら、原っぱにでも行ってみる?」
原っぱ・・・うん、いいかも!!
「うん、行きたい。」
「で、何か手を加える?」
「雨があまり降らないから、もう少し水を出しておこうかな。」
田んぼの一角にある機材を弄り、設定を変える。この世界では、装置として設定できるようになっていた。扱い方は簡単で本当に良かった。
更に、いつものように養蜂箱も覗いておく。せっせと花畑に蜜を集めに飛び回る蜜蜂を見ては安堵する。ここにはスズメバチなどいないみたいだから本当に良かった。秋口の蜜集めが楽しみだ。
そして、楓の木。溜まったシロップを集めては、瓶詰めにしておく。リヒトに瓶詰めをお願いしている間、私はきのこの小屋で収穫だ。そう言えば、松茸があるんだよね。それも、結構な数。
笠が開き切らない内に収穫したものが、作業場の冷蔵庫に詰まってる。まだ、食べてなかったことを思い出す。キッチンに収穫した松茸を置いていると、リヒトが現れた。
「松茸?いい香りだね。随分多い数だけど、出荷でもするの?」
「ううん、食べちゃう。」
「でも、こんなにたくさんあるなら少し出荷してもいいんじゃない?ほら、作業場の冷蔵庫にもいっぱいあったし。」
それは確かに・・・。
「松茸のフルコースが食べたい。」
「それでも、まだたくさん残るよ。はい、出荷しようね。」
リヒトに勧められたので、出荷箱に入れておいた。明日の夕飯は、松茸のフルコースだ。今からワクワクが止まらない。
「ほら、畑に行くよ。」
「野菜の出荷もしないとね。」
収穫して空いたペースに、次の季節物の種を蒔いておく。夏にならないと発芽はしないけど、後二日で夏だから前倒しの作業だ。ゲームでは季節にあったものでないと種蒔きすら出来ないけれど、試してみたら可能だったから良かった。
トマトやキュウリなど、夏野菜は欠かせない。と言うことで、春ものと入れ替えての畑作業に精を出す。ゲーム通りじゃなくて良かった。
「莉亜、お昼ご飯だよ~。リクエストの塩唐揚げだよ~。」
![](/image/skin/separater16.gif)