第29章 農業生活二十七日目
また、ポテッとリヒトの胸に頭を靠れさせる。何だかんだ言っても、リヒトの腕の中は心地いい。あわよくば、このままスリスリしたいくらい。
いや、逆にスリスリされてる・・・。ついでに、いっぱいキスされてる。この溺愛は何処から来るんだろう?
が、またしても気の抜けた音が・・・。申し訳なさでいっぱいだ。
「ごめんごめん、昼食の準備するよ。ありがとう、僕のお願い聞いてくれて。」
「ううん。全然いいよ。改築も終わったし、誰もいないから。」
リヒトがフト考え込む。そんなリヒトを見ると、何となく怪しい?微笑みを向けられた。
「さ、ご飯しよう。」
あれ?気のせいだった?リヒトとキッチンで昼食の準備だ。チーズたっぷりのグラタンを作ってくれた。後は定番の野菜サラダとオニオンスープ。
「リヒト、作業場の冷蔵庫からヨーグルト取ってくる。」
「じゃあ、僕は果実ソースを出しておくよ。何味がいい?」
「苺!」
主張をしてから、作業場へと向かう。いそいそとヨーグルトが入ったタッパーを手にしては、冷蔵庫の中身の消費具合を眺めていた。
「アイス作ろう。これから暑くなるしね。」
って、キッチンに戻ってくれば・・・リヒトの無表情さを隠しもしていない状況と、額が膝に付きそうなコーラルの姿があった。
あ~、叱られたんだなと察する私。特に、イルミナは怒らせるとかなり怖いらしい。
「気が済んだなら帰りなよ。」
取り付く島もないリヒトのセリフに、ちょっとだけ可哀想になってくる。こういう時のリヒトは、本当に容赦ない。
「リヒト・・・。」
「り、莉亜っ!!本当にすまなかった。この通りだ、許して欲しい。」
「ズルい言い方をするんだね。そういう言い方されたら、優しい莉亜なら許してくれると思った?」
えっと・・・本当に、容赦なく追い込んでいるよね?
「そ、そういう訳では・・・。」
「じゃあ、帰れ。」
リヒトが見たことないくらい怒ってる。それも、冷静に・・・。私もちょっと怖い。
「リヒト・・・そんなに怒らないで。」
リヒトがハッとした顔をして、直ぐに眉を八の字にした。
「ごめん。」
「コーラルさん、取り敢えず帰って下さい。今からご飯なんです。それと、謝罪なら・・・そうですね、原稿用紙に10枚分くらいの謝罪のお手紙でください。それを読んで今後を考えます。」