第3章 農業生活三日目
ふと、目に飛び込んで来たのはワインセラー。確か・・・イベントでワイン作りがあったっけ。果物の栽培は日数が掛かる。その果物から作られたワインだ。
それにしても、この世界のワインの容器は綺麗に中身の色が見える。葡萄だけはなく、数ある果物の全種類を作った記憶がある。つまり、ここには全種類の果物の味がするワインが入っている。
私は大酒のみではないけれど、甘いワインは好きな方。確か、イベントで飲むシーンもあったから、熟成期間は問題ないだろう。うん、いつか飲んでみよう。
そんなことを考えていると、また体に浮力感。そして、リヒトの顔が近い。超・・・近い?今・・・私の額が甘い。目の前で、とびきりのイケメンスマイル大解放中。
「あ、あの・・・私、自分で歩ける・・・と思う。」
自信ないけど・・・。無駄かもしれない抵抗を試みたけれど、笑顔で却下されてしまった。
「ダメだよ。」
たった四文字の言葉なのに、反論を受け付けない威圧感。仕方なく、私はリビングまで運ばれていった。もう、荷物として自分を思おうと決断して。
ソファーに下ろされ、目の前にしゃがみ込んだリヒト。
「お願いがあるんだけどいいかな?」
「何ですか?」
「燻製機使ってみたいんだ。ほら、あの鱒を使って。」
その提案に、少し考える。鱒のことは賛成だし、どうせなら他にもやってみたい。何がいいかな?
「ダメかな?」
考え込む私に、眉を八の字にするリヒト。どうやら、私の反応が否定のものだと思ったらしい。
「あ、そうだ。ハムも作りませんか?」
「ハム?えっ?あのハム?え、いいの?作りたい!!」
いい笑顔を頂きました。では、明日のお昼からは燻製機で加工品作りに決定。
「じゃあ、僕は夕食の準備に行ってくる。莉亜は、ゆっくりしてて。」
お言葉に甘えて、私はゲームの一年目の事を思い出して気付いてしまった。
「春っ!!お米作りしなくちゃ。」
日数が掛かる米や麦はこの季節に植えなければ、秋に収穫が出来ない。忘れるところだった。明日は田植えに決定だ。初めてのガッツリ農業体験になりそう。
確認の為に、倉庫へと出向いた。ドアを開ければ、ゲーム通りの陳列されたレイアウト。一番頑張って手に入れたのは、作物から種や苗に作り替え出来る機材。
「高かったんだよね~。このシード機。」
つい、機材を撫でる。