第3章 農業生活三日目
陳列棚には、ソート毎に種と苗が並んでいた。肥料を作る機材や、農具も置かれている。記念に捨てずにとっておいた、農具の数々。
「米ともち米・・・小麦、大麦。水田も見ておこう。」
水田は畑の奥にあり、そう広大なものではない。レベルが上がると、そう多くを植えなくても量は得られるようになったからだ。現実と違って、耕して水を入れれば直ぐに植えられる作業。明日は、筋肉痛になりそう。鍬・・・扱えるかなぁ?
そうだった!!レンコンも欲しい。あれは、確か二週間で採取出来る。後は・・・。
チラッと、裏の山を見上げた。ここには、自然の筍もあったはず。私って、過労で死ぬ?でも、筍欲しいし山菜だって手に入れたい。優先順位を立てて、順番にこなしていこう。
心の中で奮起していると、人の気配を感じて振り返った。
「何してるの?」
「明日からの作業の事で、下見に来ていました。」
「本当に、莉亜は働き者だね。でも、出掛ける時は声を掛けて欲しいな?」
ちょっと、ご立腹?
「ごめんなさい。」
ゲームでは、そういう対人のことを気にする事が無かったから・・・。次からは気を付けなきゃ。
「いいよ。それで、何をするつもり?」
リヒトの質問に、優先順位を立てて説明した。簡単に言えば、米作りなどの水田作業。そして、山へ山菜採り。
「お世話になっているんだから、僕も手伝うよ。」
そう言われたけれど、鍬で耕すリヒトを上手く想像出来ない。いや、見くびっているとかじゃなく。でも、そうだね。少しはお願いしてみよう。
「お願いします。・・・重労働ですけど。」
私だって、自信などない。ゲームの中の私は、連日労働の賜物の体づくりがあったから。でも、やるしかない。
家に戻り、夕食に舌鼓。メニューはハムステーキと温野菜。つみれのすまし汁。
「ハム美味しいっ!!」
「莉亜が作ったものなんだけどね。でも、このハムもお店に欲しいなって思う。いや、個人的に欲しい。」
「個人消費なら、構いませんよ。」
売り物にすれば、その分の作業が増えるもの。私は私のペースで、この生活をやってみたいと思っている。元の世界に戻るとかは、この世界を楽しんでから考えようと思う。
そう、今は夏休みみたいなもの。それでいい。