第28章 農業生活二十六日目
何処までもいい人だ。
お昼をご馳走することになって、ジルドたちと共に食べることになった。最終日のジルドたちは残念そうな顔をし、クベルは満面の笑顔の両極端だった。
楽しい昼食も終わり、クベルは仕事に戻って行った。私たちは、温室での作業に行く。
「リヒト、大丈夫?」
「僕より、莉亜の方こそ。」
「私にはリヒトがいてくれるから大丈夫だよ。」
ニッコリ笑うと、抱きしめられた。
「うん、僕は莉亜の味方だから。あのジャガイモ、夕飯の時に蒸かしてバターかけて食べようね。」
「うん。楽しみにしてる。」
リヒトに撫でまわされた後、季節物ではないほうれん草や白菜などを収穫する。
夕方になると、ジルドに呼ばれて最終確認。リヒトと共に、説明を受けて、この日、ジルドたちの作業が終わった。頑張って早く終わらせてくれたお礼に、野菜をジルドたちにお裾分けしておいた。
笑顔で帰って行ったジルドたちを見送り、静かになった家の中に入った。最近は、人の気配があちこちでしていたから静けさが不思議だった。
改築祝いにステーキを焼いてくれ、二人でお祝いをした。洋梨のワインを飲んで、今回もほろ酔いの私。
「ねぇ、リヒト。」
「ん?」
「ジークさんが・・・窘めてくれるよね?」
リヒトが、額にキスする。
「イルミナさんもいるしね。でも・・・僕は許さないけど。」
「私も・・・キツイこと言っちゃった。」
ポツリと言葉を溢すと、リヒトが抱き締めてくれる。
「小競り合いなら、莉亜が戻って来る前に散々やったけど・・・。あの時は、殊勝な事言ってたのにね。ただ、あのまま他の農家に行ったら・・・。」
小競り合いで終わらないと思う。
「リヒト・・・いつもありがとうね。」
「莉亜の為なら、どんなことでも僕は苦にならないから大丈夫だよ。でも・・・たまに、ご褒美で莉亜からキスしてくれたら嬉しいけど。」
ん?ご褒美?
「何なら、僕を撫で回してくれても構わないよ。あ、僕が莉亜を撫で回す方も捨てがたいなぁ。」
矛先が、段々変わっていっている気がする。
「なんて言っても・・・僕は、莉亜さえ幸せに笑っていてくれるだけで十分だよ。莉亜のその笑顔を、僕が守ることが出来るだけでいい。他には何もなくていい。」
真面目なリヒトの声で、思いの丈の言の葉を紡ぐ。