第27章 農業生活二十五日目 後編
「冗談だよ。でも、もう少し僕を信用してよ。ね?」
「はい・・・すみません。」
「もうこの話しは終わり。春の最後の日、店を始める準備をするから、その日から頼むよ。」
リヒトは微笑むと、カミルはホッとした顔をした。
「あ、そうそう。さっきの様に、莉亜に詰め寄るのは、次は許さないからね?それだけは絶対に忘れないでね。」
青い顔をして、何度も頷くカミル。リヒト、何故知っているんだろう?
「夕飯、食べてく?」
「いえ、帰ります。祖母が心配して待っていると思うんで。」
「そう。じゃあ、少し待ってて。」
今日漬け込んだ、セロリの瓶詰の一つをカミルに渡した。
「おばあさんにも心配かけたみたいだから、良かったら一緒に食べてみて。」
「ありがとうございます。莉亜さんも、すみませんでした。それじゃ、春の最終日に来ます。」
ペコッと頭を下げては、帰って行った。チラッとリヒトを見ると、穏やかに微笑んでいた。
「リヒトも、カミルくんのこと大事に思っているんだね。」
「まぁ、それなりにはね。あ、でも、だからと言って、莉亜に詰め寄る事は許せないけど。」
「えっ?」
当たり前だよね、って顔で私を見ている。え、何か・・・カミルくんごめん?
「さ、夕飯にしようか。」
献立は、ビーフシチューだった。嬉しくて小躍りしそうだ。食べ終わるまで、ずっと美味しいって口にしていた気がする。
その後は、お風呂で疲れをとって・・・今は、ベッドで寝転んでいる。は~、まったりした時間。
「ねぇ、あの二人のことどうするの?」
「あぁ、抗議するよ。ウチの優秀なスタッフを奪うなって。」
「カミルくん、それ聞いたら泣いて喜びそうだね。」
そう言うと、楽しそうに笑っていた。私には分からない、二人だけの絆があるんだと思う。リヒトだって、カミルの存在を大事に思って・・・思ってるよね?
「リヒト・・・もし、私が、また、詰め寄られることになったら・・・カミルくんのことどうするの?」
「う~ん・・・どうしようかなぁ。やっぱり、許せない・・・かも?」
やっぱり、カミルくん・・・何か、本当にごめん。
「その事で、莉亜が泣くようなことになったら、躊躇しないかも?そうならない事を、祈ってて。」
「う、うん。いっぱい祈っておくよ。」
余計なこと聞いちゃった。