第27章 農業生活二十五日目 後編
「あの・・・俺は、必要なくなったのですか?」
「ん?必要なくなったって、どういうこと?」
「莉亜さんと店をやるから、俺のことは必要なくなったって聞きました。た、確かに莉亜さんは色んなことを知ってて、料理も出来るのは知ってます、でも、俺だって!!」
必死に、抗議しようとするカミルは、私はどうしてそういう話しになったのか不思議でならなかった。
「リヒトは、嘘を付いたりしないよ?」
「えっ?嘘?」
「リヒトは、カミルくんと一緒にお店を遣りたいって言ったよね?私も、それが当たり前だと思ってるんだけど。」
私の言葉に、カミルは何やら考え込む素振りをした。
「俺・・・騙された?」
「騙されたって、誰に?」
「すみませんでしたっ!!」
今度は、大声で謝罪だ。
「莉亜?あ、カミル。えっと・・・これは、どんな状況なのかな。」
戸惑うリヒトだったけれど、それは私も同じ気持ちだ。家の中に招き入れ、カミルの話しを聞くことにした私たち。
「ジーナから聞いたんです。リヒトさんの店は、莉亜さんとやるから俺のことは必要なくなったらしいって。だから、ジーナの果樹園を婿入りして手伝えって言われました。」
私たちは、目が点だった。いきなり、飛躍し過ぎだ。何だよ、婿入りって。それに、カミルは彼女持ちだったはず。まぁ、婿入りより必要ないと言われたことの方が、カミルからすれば重要だったのだろう。
「それと同じ様なことを、パルマからも言われました。パルマの方は、祖母の家業を一緒に継ごうと言うことでしたけど。」
これにも、私たちは目が点だった。そうか、パルマの家業の畑には雇っている人たちがいるから婿入りは必要ないのかな?
兎に角、隣り村のカミルにまで、言い寄っていたのか。そりゃあ、ショックだよね。あんなにリヒトを崇拝しているのに。
リヒトは立ち上がると、カミルの目の前に行った。リヒトを見上げるカミルの頭を、リヒトは鷲掴みする。
「い、痛いですっ!!」
「ねぇ、莉亜は僕を信じてくれてるのに、莉亜より付き合いの長いカミルが、どうして僕を信じられないのかな?本当に僕のこと、尊敬してるの?」
穏やかな口調だけど、リヒトの声は寒く感じる。怒ってる・・・よね?いつも無表情のカミルが、少し泣きそうになってるし。でも、リヒトは直ぐに頭を撫でた。