第27章 農業生活二十五日目 後編
肥料は作物からも作れるから、上級の作物から作っている。上級だから、肥料も上級になり価値が上がる。余裕が出来たのは、最近のことだ。作物から肥料も三つしか作れない。むやみやたら、人の手助けは出来ない。
雑草も使う時はあるけれど、元々の絶対数が少ない。それに、雑草ばかりでは高性能なものは作れない。だから、混ぜ合わせている。ついでとばかりに。
「シード機って・・・幾らしたの?」
「一千万だよ。シード機買った後、暫く貧乏だった気がする。」
「一千万・・・道理で、莉亜が大事にしていると思った。」
お蔭で、今は楽だけどね。決して、他の機材も安価ではないのだけど。それは言わなくてもいいや。
「で、さっきのセロリの種は?」
「勿論、作ったよ。手軽だしね。」
始めた頃は、直ぐに貧乏になったなぁ・・・。資金があっという間に消えてしまっていたから。今は、毎日肥料を与えられているんだからよく頑張ったと思う。
だから、ここの敷地全てに私の思い入れがある。誰にも穢されたくないし、自分のペースで色んなことを手掛けていきたいと思ってる。
それでも、農業に興味を持ってくれる人には、ささやかながらレクチャーすることも構わない。
「リヒト、私、ちょっとここの敷地を見て回りたい。」
「そうだね。でも、あまり遅くならないようにね。僕は夕飯の支度をするから。」
時間が過ぎるのが早い。
水田や養蜂箱、きのこを栽培している小屋、楓の木など外にあるものを全て見て回った。ゲームのことを思い出すと、今の光景は感慨深い。
そして、倉庫。あらゆる作物のベースがここに仕舞われている。畑に植えるものは、空いたスペースがそのままにならない程度に、品種を変えて育てている。同じ物より、違うものを育てた方が畑の品質が下がりにくいと聞いたからだ。
そんな中、倉庫の奥にある大きな棚には、収穫した花が保管されている。その花をクエストの時に出荷したり、加工したりとしていたのだけど・・・今は、ひっきりなしに収納されている状況。
「さて、外はこんなものか。リヒトのところに・・・?」
視線を感じて、振り返った。
「カミルくんっ!!」
「ご無沙汰してます。すみません、驚かせてしまって。」
「ううん。リヒトに用?何か、元気が無さそうだけど・・・どうかしたの?」
久しぶりのカミルの表情は暗かった。