第26章 農業生活二十五日目 前編
「お~い、二人とも来てくれ!!」
家の方から、ジルドの声が聞こえてきた。二人で顔を見合わせてから、声のする方へ向かった。
「どうかしたんですか?」
「あぁ、ちょこっと細かいところもいじったから見て欲しくてな。」
向かった先は、仕切りが後から付けられる大きな部屋。
「ここは?」
「何言ってんだ、子供部屋だろうが。今はだだっ広い一つの部屋だが、仕切りが付けられるようにしてある。」
「ありがとうございます、ジルドさん。楽しみだなぁ、僕と莉亜の子供。」
気が早いのでは?まだ、お腹にすらいませんが。それに・・・ゲームでは、一人しか子供は出来なかったけど。今は、どうなんだろう?フト、疑問に思う。ただ、リヒトだけは物凄く嬉しそうだった。
「まぁ、頑張れ。」
またしても、ジルドに労われる。でも、これもいつもの様に、私の肩に置かれたジルドの手はリヒトに払われているのだけど。
それにしても、この部屋・・・広いね。何人欲しがっているのやら。怖くてとても聞けそうにないけれど。
「なぁ、リヒト。今日の昼なんだが・・・あまり、無理しなくていいぞ。農家って、今、大変なんだろう?」
ジルドが言っているのは、お昼ご飯のことだろう。でも、そこは最初に取り決めたことだ。
「そういう契約ですから、気にしなくていいですよ。お気持ちだけで大丈夫です。」
「そ、そうか・・・。俺からそう言ったものの、リヒトの飯は美味いからなぁ。それも明日で終わりなのが残念なところだが。」
「お店を再開したら、またいらしてください。今度は気兼ねなく実費で。」
笑顔のリヒトに、苦笑いするジルド。前のお店の時は、朝食だけ作って貰えていたけれど、私はどうしよう?
「どうしたの?」
「あ、うん。リヒトがお店を再開したら、私はどうしようかなって。作業場で料理しようかな。」
「何だ、その事。同じ家にいるんだから、今と変わらず僕が作るよ。莉亜に実費なんて請求しないから安心して。」
ジルドが羨ましそうに、私を見ている。
「でも・・・リヒトにそこまで甘えるのはダメなんじゃないかな。」
「地代の代わりと思ってくれればいいよ。」
そっか、地代か。
「分かった。じゃあ、甘えさせて貰うね。」
ここの賃借料は、田舎過ぎてとても安価だ。毎日のご飯の方が、高く付きそうだけど。