第26章 農業生活二十五日目 前編
次に来たのが、店の方だ。カウンター席のみだから、必然的に住居と明確に分けることが出来ている。間違って、住居の方には入って来られない事に安心する。
キッチンの方は半分オープンで、半分は目隠しされていた。そして、空いたスペースには釜が作られる。もう半分は出来上がっていて、明日のお昼には完成するらしい。
その後、リヒトは昼食の準備に取り掛かる。私は畑に出て、セロリの収穫の続きに取り掛かる。
リヒトのお店に来た農家って、そこそこ大きなところだよね。野菜の試食はしているだろうから、本当にリヒトの好みでは無かったってことだよね。
村で食べたのって、ポップコーンくらいだし・・・。アレは美味しかったんだよなぁ。また、機会があったら何か食べてみよう。そもそものお店数自体が少ないのだけど。
セロリを入れた籠を持って、家の中に戻る。すると、釜を作っているルドがいた。
「あぁ、莉亜か。って、それってセロリか。」
少し顔を顰めるルド。
「莉亜、お疲れ様。ルドさん、その顔は失礼ですよ。」
「リヒト・・・あぁ、そうだな。すまん、莉亜。」
「いえ、苦手な人は多いですし、気にしてませんよ。」
リヒトにセロリを渡して、私は空き瓶を準備する。
「莉亜の作った出汁醤油に漬けると、美味しいんだよね。」
「リヒトも好きでいてくれるんだ。」
「勿論だよ。あんな美味しいセロリは、中々無いからね。」
絶賛してくれるリヒトに、片隅で作業中のルドは肩身が狭そう。
「あ、そうだ。唐辛子あるかな?」
「あるよ。」
そういうやり取りを、数回繰り返す。
「莉亜のところの品揃え、半端ないな。」
「農家なら普通じゃないですか?」
サラッと言ってのけた私に、リヒトとルドに突っ込まれた。
「「それはない!!」」
「そ、そうかなぁ・・・。」
自覚がないとか色々と言われたけれど、他の農家と比べることなんて無かったから、みんな同じようなものだと思ってた。
「そう言う所も、莉亜らしいけれどね。さ、そろそろご飯にしようか。ルドさん、ジルドさんを呼んできてください。」
今日は、皆で揃って食事した。
因みにセロリの出汁醤油漬けは、あまりにも私たちが美味しそうに食べるからルドにせがまれたけれど、笑顔でリヒトが拒否していた。容赦ない・・・。