第26章 農業生活二十五日目 前編
「飼料用の機材があっても、それを作る原料が不足しているんですね。何か、負の連鎖ですね。」
「まぁな。牛の飼料に事欠かないことだけが、まだ救いだ。で、相談なんだが、暫くは卵の不足分を牛乳に変えて貰ってもいいか?」
今のウチの食料の在庫は、リヒトの方が知っている。リヒトは頷いてくれたので、私はケビンの提案を承諾することにした。
「じゃあ、加工品増やそうかな。チーズとかヨーグルトとか。」
「それはいい案だね。その方が、高価に出荷出来るし。」
「莉亜の財布事情が、更に豊かになりそうで羨ましいな。」
この村の商品の単価が変更できない規定になっている。ゲームの補正かもしれないけれど。持ちつ持たれつなんだよね。高額の飼料を飼って育てても、卵の価格は変えられない。唯一、価格設定が違うのは卵の種類とサイズのみだったはず。
例でいうと、一般的な卵と烏骨鶏や鶉の卵では単価が違う。因みに、ウチでは全種類購入している。メインは一般的な卵だけれども。
乳製品の機材は、ただ私が加工して料理に使いたかったから購入したんだ。本来なら、農業している家には無くてもいい機材の一つだと思う。話し合いが終わり、荷下ろしの為にリヒトたちは行ってしまった。
ゲームの中では、こんな出来事は無かったな・・・。でも、現実なら当たり前に起こること。それに、店で売っていた種などの品質は一年目と同じ最低値の品質だった。そこはゲームと同じ。
チマチマと少量を大事に育てて、品質を上げて頑張っていた時が懐かしい。後は、畑のレベル。懐が温かくなって、肥料を与えた結果が今の最高値の畑だ。
フト、思う。ゲームでやったことはないけれど、今、他の農家が育てた野菜ってどんな味がするのだろう?商店で、少しだったけれど季節の野菜を売っていたのを見た。
買おうと思ってもいなかったから、気にしてはいなかったけれど。どんな味がするんだろう?ゲーム内では、味まで分からなかった。
「莉亜、終わったよ。って、また何か企んでる?」
「ありがとう。って、企むなんて人聞き悪いよ。ただ、他の農家の育てた野菜の味はどうなのかなって思っただけ。」
リヒトが微妙な顔をした。ひょっとして、知っているのだろうか?
「店をやっていた時に、持ち込みがあったんだけど・・・。」
まぁ、こういう村だからそういうこともあるだろう。