第25章 農業生活二十四日目 後編
「あっ・・・。」
思わず声を上げてしまった。視線の先には、ジーナとパルマ、そして二人に挟まれたクベル。慌てて目を反らす。視界の端で、クベルが私たちに気付いたように見えたけど・・・何かに気付いて、クベルは青い顔をした。
ひょっとして・・・?リヒトの瞳が冷たい。声を掛けて来るな的なオーラがビシビシ伝わってくる。クベルは、まだ優しい人格者っぽいから付け入られている最中なのだろう。
だからと言って、あの状況に甘んじている訳では・・・気にはなるけど、正直に言って関わりを持ちたくない。でも・・・う~ん・・・。
「・・・莉亜、ここで少し待ってて。」
「えっ?あ、リヒト・・・?」
リヒトは、クベルの元へと近づいて行った。リヒトの目は、クベルしか見ていない。且つ、淡々と話しているように見える。ジーナとパルマは、ポーッとリヒトを見ている。
あんなに冷たくされているのに、その事はどうでもいいのだろう。クベルも戸惑っているみたいだし、いきなり腕を掴んで私の方へと来た。私の存在に気付いた二人が、睨みつけてくる。
私にとって、どうでもいい存在だ。興味無さげに目を反らし、リヒトを見た。目が合うと、急に笑顔になった。私も笑顔になる。
「助かりました・・・。」
「次はないかもしれないけどね。ほら、行くよ。」
二人の姿が見えなくなる場所まで、歩き続けた。
「ありがとうございました。あ~、パワフルだったなぁ。」
「自力でどうにかしないと、ずっとこのままだよ。」
クベルは、大きな溜め息を吐いた。
「分かってはいるんですけど。この前は、コーラルさんにも言い寄っていて、あっさりと突き放されていました。」
「らしいとしか言いようがないな。」
私もそう思う。
「仕事量が少ないから、こんな時間に時間の猶予が出来てしまって・・・ちょっと、困っているんですよね。」
「それなら、コーラルの手伝いでもすれば?忙しそうだったから。」
「コーラルさんの?そうだな・・・それもいいかもしれない。聞いてみます。」
コーラルに守って貰うつもり?って、思い立ったが吉日かのように、直ぐに役場へと走って行ってしまった。行動的な人だ。
「宿屋にも、行ってみる?」
「うん。」
宿屋的には、どうなんだろう?