第25章 農業生活二十四日目 後編
細められた目が、私を見た。切れ長の目だから、ちょっと怖い。
「定期・・・購入してもいいだろか?」
あれ?ツンデレ?少し恥ずかしそうにしている。私はリヒトを見た。笑顔だったので、頷いておいた。
「そ、そうか。助かる。」
ハチミツキャンディーで助かるって・・・。コーラルは、ハチミツが好きらしい。どちらかというと、細めのシュッとしたイケメンだ。神経質に見えるし。ハチミツ好きのイメージはない。
「莉亜、見過ぎ。」
「本当にリヒトは、莉亜にゾッコンなんだな。」
「そうだよ。可愛くて仕方ないんだ。」
だからって、コーラルの前で抱き着かないで欲しい。
「それで、村のことだよな。丁度いい。」
そう言って、何枚かの書類を見せてくれた。その書類に示されていたのは、各農家の出荷量だった。殆どが、規定量を満たしていなかった。その中で、開墾して畑を増やしているところもあるそうだ。
開墾か・・・ウチは無理だな。手が回らない。それに、作物だけじゃなくて花も好きな私は目の保養として花も植えたい。近隣の村々でも、規定を達しているのはそこそこ大きな農園だった。
「思った以上に、皺寄せが来てるね。」
上から覗き込むリヒトが、書面に目を通して呟く。
「全くだ。このままでは、作物が村々に行き届かなくなるだろう。村長も頭を抱えている。私も葉野菜が好みなのだが、手軽に手に入らなくなっている。」
コーラルは、葉野菜も好みなのか。チマチマとは野菜を齧っているコーラルを想像し、ちょっとだけ微笑ましくなった。
「そこでだ。莉亜の畑を見させて貰ってもいいだろうか?クベルから聞いたのだが、変わらずいい発育具合なんだろう?」
「莉亜の真似は出来ないと思うよ。最上級の肥料を、自家製として賄える環境だからこそだから。それは長い期間、莉亜がコツコツ積み上げてきた努力の結果だ。金銭的にも、そう真似ることは難しい。それに・・・莉亜に、不遇を背負わせるなら、僕が全力で阻止するから。」
「そう睨むな。私はそんな思惑などない。仮にそんなことをしても、それは一時的に凌げるだけなことも分かっている。ただ、見せて欲しいだけだ。私を信用ならないと言うなら、リヒトが私を監視しても構わない。」
白熱しているやり取りに、私は話しに混ざれなくてオロオロするだけ。確かに、私の畑も家も努力した結果なのは間違いない。