第22章 農業生活二十二日目
「私も悪かったわ。後で、一緒に食べましょう。莉亜のクッキーは凄く美味しいから、独り占めしちゃいたくなるのよね。」
「クッキー?へぇっ、莉亜は料理もするのか。材料から自家製だよな?ある意味、凄いな。楽しみにしとく。」
「それじゃ、失礼します。」
リヒトに手を引かれ、職人通りの道を歩いていく。そして、さっき見かけたパルマたちは、もうそこにはいなかった。が、家へと向かう中、今度はジーナとパルマの元カレのツーショット。
こっちは、何か小競り合い?見なかったフリ。うん、それに限る。が、大きな音がしてそれに釣られて目を向けてしまった。
「莉亜、行くよ。」
少し強引に手を引かれる。以前の双子のビンタを思い出した。そして、今回、顔を腫らしていたのはジーナだった。女の子に手を上げたことに驚きつつも、ジーナは負けていないようで・・・。
逞しいなぁ・・・。つい、自分の頬を撫でてしまっていた。痛くもないのだけど、無意識の行動だろう。
「莉亜、僕が撫でてあげようか?」
「えっ?あ・・・ううん、大丈夫。」
「じゃあ、コッチ。」
不意に触れた、リヒトの唇。
「なっ!?こ、ここは外だよ。」
「知ってる。でも、したくなったから。」
「二人は本当に仲がいいんだなぁ。」
声を掛けて来たのは、レントだった。
「さっきはありがとう。本当に助かりました。」
「いいえ。あ、私は年下なので敬語じゃなくていいですよ。」
「そう?じゃあ、そうする。で、パルマを見なかった?」
意外な名前が出て、私はちょっと驚く。仲良く・・・しているのだろか?まぁ、人の自由なんだけどね。
「どうかしたんですか?」
リヒトが尋ねれば、レントは笑顔になった。でも、次に並べられた言葉に驚愕する。
「あぁ、おつかい行っている間に、こういうもの寄越してきたらしいんだ。でも、こういうの貰っても迷惑でしかないからさ。次からは余計なことしないでって言おうと思って。」
袋の中は、チョコレート菓子が幾つか入っていた。
「甘い物、嫌いだって言ってたっけ。」
「そうなんだよ。嫌がらせにしか思えないだろう?」
嫌がらせではないと思うんだけど・・・。多分。
「あ、あの遠くにいるのパルマだな。じゃあ、またな。」
視力がいいらしい。颯爽と走って行ってしまった。
「レントさん、甘い物苦手なんだね。」