第22章 農業生活二十二日目
「キッチンの方も、今日で終わるみたいだね。他も数日で終わるみたいだよ。」
「早いね。外の仕切りとかも大丈夫?」
「うん、ジルドさんには話してあるから。これで、簡単に家の中を覗いたり出来ないよ。これで、莉亜も安心だね。」
こういうところは、ゲーム補正だからか作業日数が早い。現実と違って四ヵ月しかないから、こういうものなのかもしれないのだけど。
職人通りに差し掛かると、パルマと元カレのツーショットがあった。建物の影で、何やら話をしている。でも、下手に関わりたくなくて早々に目を離す。
やがて、シノンのお店に到着して店内へと入った。
「「こんにちは、シノンさん。」」
「あ、いらっしゃい。服の方なら出来てるわよ。試着してみて。」
この時になって、リヒトの分もオーダーしたことを知ったリヒトは目を丸くしていた。色物のシャツに、動きやすいパンツの上下を二着ずつ。
私はワンピースを二着と、作業用のシャツとパンツのオーダー。女の私より、試着するリヒトが美しくて見惚れてしまう私。
「リヒト、カッコイイっ!!」
「ありがとう。莉亜可愛いよ。よく似合ってると思う。シノンさん、ありがとうございます。」
「二人とも、目の保養させて貰ったわ~。サイズもピッタリで大丈夫みたいね。そのまま着て帰る?」
二人で顔を見合わせて、私たちは頷いた。新しい洋服は、気分も上がるから不思議だ。
「そうだ、シノンさんにお裾分け。クッキー持って来たんです。はい、どうぞ。」
「あらっ、嬉しいわ。有難う。ローランに見つからないように、隠しておかなくちゃ。」
「姉さん、何を隠すって?」
いきなり現れたローラン。シノンの手にある袋をロックオンしている。それに気づいたシノンは、直ぐに背に隠した。隠したのだけど、あっさりと奪われている。
ローランは背が高く、シノンは小柄な方。ようは腕を伸ばして、中身を確認しているローラン。それを、リヒトが奪ってシノンの手に戻した。
「あっ、リヒトっ!?っ!!そんなに怒るなよ。」
「別に怒って等いませんよ。ただ、莉亜の目の前で見苦しい真似は控えて欲しいですね。」
「わ、分かったよ・・・。」
子供っぽいローランに、私はつい笑ってしまった。ローランの違った一面を見ることになったけれど、こういうところも人間らしいと思う。