第22章 農業生活二十二日目
「うん。僕以上にかも。特に、チョコ嫌い。」
そ、そう・・・。だったら、嫌がらせとか思ってしまうのかも?
「リヒトは?その・・・明確な嫌いな物ってあるの?」
「僕?甘い物全般得意じゃないけど、そうだなぁ・・・ジャムとか苦手だったんだけど、莉亜のジャムと出会って考え方が変わったよ。ほら、ジャムって殆ど砂糖だしね。」
「えっ・・・ご、ごめん。」
初対面の時にも出しちゃったし、あれって嫌がらせとか思われてたんじゃないのかな?
「莉亜、僕は変わったって言ったんだよ?莉亜の作るもの全て好きだし、興味深いんだ。だから、そんなションボリした顔しないで?」
それじゃ、私が作るものなら何でも可みたいじゃない?
「リヒト・・・私に甘いよ。」
「今更でしょ?」
「まぁ、そうかもしれないけど。」
リヒトが絡めている指先を、キュッと力を込めた。いつもの笑顔で。そんな時、遠くから誰かの怒りの声が聞こえた気がしたけれど、聞こえなかったフリをした。
家に帰ると、丁度、ジルドたちが出てきた。今日の作業は終わりらしい。そして、キッチンは綺麗に出来上がっていた。今からでも使える様だから、ちょっと嬉しい。
店と兼用になるから、コンロなども増やして貰ったから有難い。冷蔵庫なども今までのサイズの倍のものと変わって設置されていた。圧巻である。
「さ、夕食にしようか。」
リニューアルされたキッチンに立ち、二人で調理する。いや、調理と言っても私はピクルスを切ったり、サラダを作るくらいだけど。
リヒトとこうして一緒にいることが、無性に幸せに感じられた。なので・・・鍋の中をかき混ぜているのに、抱き着いちゃったごめんなさい。
「莉亜?フフ、いいよ。そのままで。」
リヒトはいつだって優しい。こんなに溺れるくらい大好きだから、もし、リヒトを失う時が来たとしたら・・・。ううん、信じないとね。
(誤解すらさせたくない・・・)
そうまで言ってくれるリヒトだもの。
「莉亜、後でたくさん可愛がってあげるから。」
ハートマークがいっぱい飛びそうなくらいの甘い声で、これは、夜のお誘いかもしれない。あんなにしたのに・・・って思ったけれど、拒否なんて出来なかった。