第22章 農業生活二十二日目
「レントは、体を鍛えるのが趣味らしいよ。僕もやってみようなぁ。」
「リヒトは、今でも十分だと思うけど。」
「ありがとう。じゃあ、畑に行こうか。」
見回りに出掛け、今日は砂糖作りの為にサトウキビを収穫。一本、皮を剥いで噛み付いた。甘い汁が口の中に広がる。今後の甜菜も楽しみである。
山盛りのサトウキビを、機材に入れて砂糖へと変えていく。今日とて、便利な機材である。二段階あって、一つ目は黒砂糖。二つ目は白糖。甜菜で作るなら、グラニュー糖が出来る。
クッキーを焼くことを提案したら、途中までなら手伝えると言ってくれたので早速作ることにした。型抜きは魚を選んだ。私が魚の型抜きでバンバンとクッキーを焼いていると、リヒトがいきなり口の中に何かを入れてきた。
「甘い?」
「べっこう飴だよ。懐かしいかなと思って。」
「うん。美味しいね。」
少し苺の果汁の味がする。そして後味には微かな酸味。
「クッキー何処かに持ってくの?」
「シノンさんのところに、依頼品を取りに行くから持って行こうと思って。シノンさんって、甘い物好きだから。」
「確か、それに輪を掛けてローランさんも甘党だったはず。」
この村は、甘党の人が多い気がする。
「じゃあ、少し多めに持って行こう。」
パックにクッキーを詰め、いつものマイバックに入れた。これで、準備万端だ。
昼食の為にリヒトがジルドたちに振舞っている頃、作業場の冷蔵庫を見ていた。大きなタッパーの中のジャムが、半分を切っている状況に気付く。
「ジャム・・・次は何味がいいかなぁ?今はオレンジのマーマレードと苺。う~ん・・・違う味がいいかな。」
「莉亜、どうかしたの?」
「あ、リヒト。ジャムを作ろうと思うんだけど、何味がいいかな?要望ある?」
リヒトは考え込んだ。そして、こう答える。
「林檎と葡萄がいいな。もし、可能ならサクランボも欲しい。」
「分かった。じゃあ、明日はジャム作りだね。」
「僕も作るよ。じゃあ、ご飯にしようか。今回はロコモコ丼だよ。」
色どりも美しい丼に、つい笑顔になる私。二人並んで、食事を始める。リヒトのご飯は、何でも美味しい。故に、あっという間に終わってしまう。片付け後、ジルドに声を掛けて家を出た。
差し伸べられたリヒトの手を掴むと、指を絡める繋ぎ方に繋ぎ直される恋人繋ぎは好きらしい。