第21章 農業生活二十一日目
「姉さんから聞いたけど、莉亜のところで店をやるんだってな?今度、村の若い者だけで友好を深めたいから場所を提供してくれないか?」
「改築中なので、それが終わってからでいいのなら。」
「あぁ、それでいい。頼むな。」
今後、この人が若い人たちを仕切っていきそう。でも、こんな人がいてくれるのなら、村のことも変わっていくかもしれない。青年団?みたいな感覚だろうか。
「で、リヒト・・・お前、どれだけ、嫁さんに執着してんだよ。」
「今更ですが?」
「姉さんが言っていたのは本当なんだな。あの小さかったリヒトがなぁ。でも・・・良かったな。嫁さんに幸せにして貰えよ。」
ん?この人も同じことを言う。普通は逆なんじゃ?あぁ、ひょっとしてリヒトのことシノンから聞いているのかもしれない。
「俺も嫁に幸せにして貰ってる。」
こんな場で、惚気を聞かされました。ある意味、新鮮です。
「クベルさんは、配達の時にあの二人から声を掛けられたりしなかったんですか?」
私の何気ない質問に、クベルが固まった。ひょっとして、禁句だった?
「ご、ごめんなさい。余計なこと言いました。」
「あ、ううん。大丈夫。うん、大丈夫だから。」
自分に大丈夫だと言い聞かせている様にしか聞こえないのですが?
「あの・・・ちょっと、お話しいいですか?」
声を掛けてきたのは、新しい住人となる女性側の方。クレアとシェリーだった。リヒトたちにかと思ったけれど、二人の視線は私に向けられていた。
「行っておいで。あまり、遠くに行かないようにね。」
「う、うん。」
リヒトの手が離れ、私は二人と共に少し離れたベンチに座った。少し逃げ腰だった私だけれど、話している内に悪い人じゃないことを感じられた。
この世界に来て、初めて友人と呼べそうな人間関係を構築出来そう。看護師のシェリーは穏やかで白衣の天使を地で行くような人。そして、クレアは話していて楽しい人。
「ちょっと、あんたそこどきなさいよ。私が新しい住人と話をするんだから。」
あれ?男性に声を掛けるのは、もういいのだろうか?
「何言ってんのよ、私の方が話しをするんだから、あんたも遠慮しなさいよ。」
おぉぅ、二人揃って上から目線だ。こういう時は、さっさと退散するべし。
「莉亜ちゃん、席を外す必要は無いわ。」
そう言ったのは、シェリーだった。