第18章 農業生活十八日目
リヒト・・・居たたまれないから、もうその変で止めてあげて欲しい。確かに、いつもより早い出勤だったけど。
「早速、作業やるけど気にしなくていいから。」
「ええ、勿論。よろしくお願いします。」
別の部屋から音がする中、私たちは変わらず仲良く食事。食べている間も、距離が近い。でも、ミネストローネは絶品だった。
食事の後は、雨具を来て二人で見回りに出掛けた。雨はシトシトと降り、穏やかで静かなものだった。
最後に温室に入り、雨具を脱ぐ。
「たまには、こんな雨もいいね。静かで。」
「そうだね。あ、これ?カカオの木。」
「うん。未だ早いけど、夏には収穫できると思う。それを使ったものをチョコレートに加工しよう?」
まだ、小粒の実を眺めてはリヒトに言った。リヒトも興味深そうにカカオの実を見ている。
「楽しみだなぁ。それで、今日の分は冷蔵庫にあるんだよね。」
「うん。私は板チョコでしか食べたことが無かったから楽しみ。」
だって、ゲームでの加工は板チョコのみだったから。なのに、何故おはぎとかあるのと思ったものだ。
「何を作るの?」
「ワインボンボン?それに、生チョコもいいな。」
歓喜に沸く私に、リヒトは笑っていた。作業場は今は使えないので、キッチンでの作業。
リヒトの手捌きで、チョコレートの艶が帯びていく。それに伴い、特有の甘さを含んだ香りが充満していく。本当にリヒトは器用だと思う。
ピカピカしているチョコレートを型枠へと注いでいく。その後は、冷やして固めていく間、ランチの準備になった。
「リヒト、私、ワイン取って来る。何がいい?」
「う~ん・・・じゃあ、赤と林檎、それにオレンジかな。大丈夫?持てるかな?」
リヒト・・・残念だけど、私はそこまで非力じゃない。籠を手にして、倉庫へと向かった。何処までも過保護だけど、気遣ってくれるのは嬉しい。隣りの作業場からは、人の声と作業をする声が聞こえてくる。
ジルドには本当に気の毒としか言いようがない。お蔭で、各段に機材を設置するスペースを増やすことが可能になる。
リヒトはお店の広さは、そう広さを求めていなかった。人員を増やしたくないし、自分の目が届く範囲でいいと言っていたのだ。それに伴い、畑に立派な柵も作られるようになるらしい。
心無い人もいるかもしれないので、その気遣いは嬉しかった。