第4章 危険な香り
パトリックが咳払いをする。
「いや、君が・・・。そうだな。」
こちらのペースに引き込めた。
男社会で生きていたためこういった場面に慣れている。
「本当に他意はないんです。身寄りがない私を心配してくれただけです。もし、目障りなようなら出て生きます。」
「いや、いい。シーゲルもばかではない。邪な気持ちがあるなら気づいているだろう。」
どうやら第一関門は突破したようだ。
「君に、ナチュラルとしての意見を聞きたいと思うんだが。」
「私の意見をナチュラルの総意として扱うのですか?」
「いや、一意見として聞いてみたい。コーディネーターについてどう思う。」
「コーディネーターですか。そうですね、様々なポテンシャルが高いという認識です。」
「ふむ、ポテンシャルが高いか」
「それ以上でもそれ以下でもありません。どちらが正しい、悪いとは思いません。」
「そんなものか」
話すことがなくなったようだ。
「・・ケーキでも食べるか?」
意外な提案に思わず一拍返事が遅れる。
「ケーキですか?」
「ああ、帰りに買って来たんだ。その、女性は甘いものが好きだと。」
どうしてレノアがこの男性を好きになったのか少しわかった。
「はい、ありがとうございます。」
ザラ邸にはメイドがいないらしい。
ニコニコしながらレノアがケーキと紅茶を持って来てくれた。
「いっぱいあるからね、もう。この人ったら本当はあなたが来るの楽しみにしていたのよ。」
思いがけず歓迎されていたことを知った。
「では、またね。」
レノアが出て行くとパトリックがこちらをじーっと見ていた。
「あ、いただきます。」
ケーキを一口食べると満足そうな顔つきになる。
思ったより親やすそうだ。
「美味しいです。パトリックおじさま?」
パトリックは大きな咳払いをする。
照れているようだ。
そのあとは簡単な質問を何度かされて時間がすぎた。