• テキストサイズ

死が2人を分つまで

第3章 向けられる瞳


久しぶりに本屋に来たのにどうやら男女がもめているようだ。
うるさいな、と思って目を向けてみると、見覚えのある風貌が見えとっさに体が動いていた。

「やめろ、嫌がっているのが見えないのか」

その女性を後ろ抱き込む形で男との間に割って入る。

「うるせーな、誰だとお前??」

反抗してくる男をひとにらみすると、たじろぎ始めた。

「ちっ、お高くとまりやがって」

男が暴言を吐きながらその場を去っていった。
後ろから抱き寄せられ反射的に抵抗しようと思ったが聞き覚えのある声に大人しく従った。
どうやらさっきの男が去っていった方向をまだ睨んでいるようだ。

「イザーク?

」恐る恐る声をかけてみると、何かに弾かれたように彼が離れた。

「あ、いや、その、すまない・・・。」

顔を背けているため表情はわからないが耳が真っ赤である。

「ううん、ありがとう、助けてくれたんでしょう?」

その姿が面白く下から覗き込んでみる。

「あっ」

足がもつれふらつく。

「大丈夫か?!」

イザークが腕を取ってくれたため本棚にぶつかることはなかった。

「ええ、ごめんなさい。」

その表情にイザークは思わず赤面した。
瞳は潤んでいて、熱でもあるのか焦点が少しずれている。
頰も紅潮しいつもより色っぽさがましている。
これはあの男が声をかけたのもわかる・・。

「体調が悪いのか?」

頭をなんとか冷やそうと話をそらす。

「え?ええ、そうなのかしら?」

そう思うと頭がぼうっとする気がした。
自覚した途端どっと、しんどさが襲って来た。

「サラ?どこか休める場所は・・」
家に連れて行くか?医者か?

「さっきの人が言ってたホテル?ってあるのかしら?休めるみたいだけど。」

「ホっ!!はっ!」

何を言えばいいのかわからず混乱する。

「どうしたのイザーク??」

とろんとした瞳で見つめられる。
どうやら意味を知らないようだ。

「その、さっきの男が言ってたホテルっていうのは・・。その、男女がその、・・・。」

男女の?なぜかイザークが言いよどんでいる。

「イザーク?」

「いやっ、そのー。その男女の営み的な・・・。」

そこまで聞いてサラもやっと理解する。

「ご、ごめんなさい、そんな場所だとは知らなくて・・・。」

「いやっ、でもベットもあるから休むことができるしな・・・。少し休むか?」
/ 50ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp