第3章 向けられる瞳
部屋に戻ってイザークはまた悶々とする。
サラに会いたいがどう誘えばいいのかわからない。
今までいやでも女性からの誘いがあり、自分が誰かをさそうということを考えたことがなかったからだ。
サラの好きそうなものを考えてみるが何も思いつかない。
「そういえば、サラのことを俺は何にも知らないな・・・」
それはそうだ。
たった二度しか会ったことがないのである。
「サラ」
「どうしたのラクス。」
クライン邸で暮らし始めて一ヶ月は過ぎた。
「実は来週から私のコンサートのリハーサルで他のプラントに行きますの。」
「あら、ずいぶん急ね。どこに行くの?」
「ユニウス市のホワイトシンフォニーという会場ですの。」
「ユニウス市?」
「ええ、サラも一緒に行きませんか?」
「他のプラントに行ったことないもの、行ってみたいわ」
「それでなんですが、明日から三日間、打ち合わせでスタッフの方とホテルのフロアを貸し切って泊まり込みで計画を立てますの。」
「それでは私、邪魔になるわ。」
「会場のリハーサル期間が急に決まったので、時間がなく、お父様も明後日から各プラントをまわりますの。そしたらサラが1人になってしまうので」
「それもずいぶん急ね。」
「ええ、だから余計に心配で・・。」
確かに、私が頼ることができる人間が皆で払ってしまうのだ。
「私はまだアプリリウスにいるので帰ってこれますが・・。」
「ううん、集中していらっしゃい。私は大丈夫よ。」
大丈夫だと微笑んでみるがラクスは心配そうだ。
どこか浮かない顔をしている。
「その・・。メイドたちも休暇を出してしまいましたの。」
「どうしたの急に?知らないうちにいろんな話があるのね。」
「その・・。父のいない期間2人で過ごせると思って・・。」
少しほおを赤らめる。
ああ、彼女は2人だけで友達としていろんなことをしてみたかったのだ。
父の立場上気軽に友達を作り、招いて遊ぶことなどできなかったのだろう。
誰にも邪魔されず、一般人のように。憧れる気持ちは痛いほどわかる。
「また次計画しましょ、今度は2人で計画して。お菓子つくったり、ご飯とかも?あとは可愛い服きて恋の話とか?」
俯いているラクスに、いつもより柔らかい声で提案する。
「約束ですわよ?」
そっと小指をラクスが差し出し、私もその指に小指をからめる。