第3章 向けられる瞳
”ああ”、とサラに返事をしてから連絡がない。
それはそうだ、質問したわけではないし、どこかに誘ったわけでもない。
「おかえりなさいませ。」
使用人の声で母が帰ってきたことに気づく。
「おかえりなさい、母上。」
「イザーク。ただいま。」
「こんな時間まで仕事ですか?夕食は??」
「ええ、仕事というか・・。会食だったのよ。」
外では堂々としている母だが家に帰ると途端に砕ける。
「そうそう、シーゲルが引き取った子に会ったわ。」
「あのナチュラルの?」
「ええ、とーっても可愛かったわ!もうお顔がこんなに小さくて、もう触ったらぽきっと折れてしまいそうなか弱さなのに、大人の中でもしっかり発言するのよ〜。」
「はぁ、でも所詮はナチュラルでしょう?」
「そうなのよねー。ナチュラルじゃなければあなたの婚約者として申し込んだのに・・」
「やめてください、母上、ナチュラルとなんて。」
呆れて怒る気にも慣れない。
「わかってるわよー。でも賢そうな子だったのよねー。」
どうやらだいぶ気に入ったようだ。
「そうですか。部屋に戻ります。」
これ以上話すのは無駄だと判断した。
「そうよねー。ナチュラルなのよねー。でも、少しクリームっぽい色ではあったけれど白髪で、可愛くて娘がいたらあんな感じだったのかしら?」
エザリアの言葉はイザークには届いてなかった。