第3章 向けられる瞳
ソムリエがワインを注いで回っていると、シーゲルが発言した。
「サラは挨拶したのだが、皆はしてくれないのかい?」
口調は優しいがどこか圧がある。
伊達にこの国のトップに立っていない。
「パトリック・ザラだ。君の姉の婚約者の父でもある。」
それに続いて隣に座っていた男性が同じように名乗り始める。
1人の人も聞き逃してはならないと集中する。
どうやらサラにも好意的な態度を取ってくれる人が何人かいるようで少し安心した。
声色に敵意や嘲りが感じられなかったり、よろしく、と最後に一言添えてくれる人だ。
そんなことを考えて聞いていると、
「ーーーだ。」
「エザリア・ジュールだ。」
はっとその容姿に見覚えがあるような気がして思い出そうとした瞬間、
「ルイーズ・ライトナーだ。よろしく。」
挨拶はどんどん進んでしまい、それ以上考える暇がなくなってしまった。
15人ほどの食事は静かに始まった。
「サラはなぜシーゲルの元に?」
議員が質問する。
「両親がなくなり、親戚として頼れる人がおりませんでしたので。」
「しかし、この情勢の中なぜナチュラルである君がプラントに来ようと思うのかい?」
ナチュラルのくせに何しに来たんだと言わんばかりの質問だ。
「情勢とは??」
にこやかに質問するが、誰もがその笑顔に動揺した。
「今ナチュラルとコーディネーターの中は険悪になりつつある。本格的な戦争も始まるかもしれない。ここまで言えばわかるだろう。」
純粋そうに少しわざとらしくキョトンとして言ってみる。
「すみません、わかりませんわ?」
声を荒げて男が言い返す。
「今ナチュラルとコーディネーターは戦争を始めるかどうかと言う状態なのだ!そんなとこにノコノコと!!」
「まぁ、ナチュラルとコーディネーターの間で戦争が??」
「そうだ!!」
「いいえ、違います、ザフトと地球軍が、でしょう。」
言葉をさえぎる。
まさか反論されるとは思っていなかったなだろう、男に同調していた物もたじろいだ。
「一般の方々が今の問題をナチュラルとコーディネーターとの問題であると大きく捉えていることを知っています。しかし、あなたたちはプラントの行政に携わる者です。一つ一つの言葉に責任が付きまとうのですよ。よく考えてから発言をお願いいたします。」