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死が2人を分つまで

第2章 穏やかな日々


眩しい。
この家は朝になると自動でカーテンが開くのだ。
仕方なく起きる。

「今日で6月か。」

声はどこか弱々しく覇気がない。
この家にいたら誰かしら私のことを心配して部屋を訪ねてくるだろう。
そう考えると今はわずらわしく、薄手のクリーム色のワンピースに着替えるフロントにくるみボタンがつけられており、細い腰は黒い細いベルトを巻き、ギンガムチェックのスカーフを巻く。
くるりと回るとAラインのプリーツスカートが軽やかに広がる。簡単に化粧を済ませ、朝、慌ただしく動いてるうちにこっそりクライン邸を抜け出した。
レンタルエレカに乗り込む。
自動運転でいける場所はIDがあればどこでもいけるとリサーチ済みだ。

「ID調べられたら私がどこに行ったか知られちゃうけどね。」

流石にそこまではしないだろうと苦笑いを浮かべる。

適当に賑わっている場所で降りてみる。
実は”お店”に1人で行くのは初めてだ。

「みんな宮中に持って来てくれてたもんね。」

それかデパートを貸し切りにして気に入ったら誰かが手続きをしてくれたからだ。

「私ほんとは箱入り娘なのよね・・。」

どこからか音楽が聞こえ耳をすます。

音が聞こえた方に進んで行くと楽器屋さんがあった。
興味が湧き店内に入る。
見たことのない楽器ばかりだ。
どう音が出るのだろうか。
奥に進むとピアノが置いてあった。
懐かしくなり一音鳴らしてみる。
ーー電子でもこんなに本物に近い音と鍵盤の重さを再現できるなんて。
ポロロロロン♪
ああ、お母様を思い出す。
まだ西洋の文化が入り始めたというのに、母は日本の文化も西洋の文化にも精通していた。
クライン邸にピアノがあったことを思い出し、何か楽譜でも買おうかと悩む。
壁一面に楽譜が並べられている。
やっぱり紙の方が安心してしまう。
モーツァルト、母が特に好きだった作曲家だ。
高いわね、一番上の棚にあり背伸びをしてやっと背表紙の下を少し霞めることができる。
もう一度手を伸ばした時、背後に気配を感じ警戒をはねあげる。平和ボケしすぎたのだろうか。
背後に気を配りながら楽譜が取るふりをする。
まだ背後の気配は消えない。
ただの客なのだろうか。
考えを巡らせていると急に距離を詰められた。

「これかいお嬢さん?」
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