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死が2人を分つまで

第2章 穏やかな日々


講義が後10分で始まる。
しかし見渡してもサラが見つからない。
今日は来ないのか?そんなことを考えながら入口をじっと見つめると、サラが教室に入って来た。
キョロキョロしていたサラはイザークを見つけ満面の笑みでこちらに向かってくる。
顔が急激に暑くなるのを感じた。

「こんにちわ、イザーク。」

「ああ、隣くるか?」

「ええ」

イザークの隣に座りタブレットを開く。
そこでイザークは思い出した。
サラが日本語を書いていたため興味を持ったことを。

「・・・それ、日本語か?」

「あっ、ええ。幼少期アジア?で暮らしていたの。」

「地球で?!」

「あっ、そ、そうなの。」

「そうか・・・、親がナチュラルだとそういうこともあるらしいしな・・・。」

どうやら私のことコーディネーターだと思っているらしい。
不意に現実に戻される。

「こ、この前と雰囲気違うな。」

イザークは必死に話をそらした。

「え、ええ。この前結構歩いたから。動きやすい方がいいかなと思って。」
サラは発言して後悔する。
これでは今日もどこかに付き合ってもらう約束をしたみたいではないか。

「ええー、今日は日本文学、源氏物語について学びます」

講義が始まりサラはホッとした。

平安時代の文化は独特である。
自分でさえ感じるのだから、未来の彼らはもっとギャップを感じているだろう。
誰もが微妙な顔をして聞いていた。
それはそうだ、光源氏は子供に恋心を抱いているようにしか見えないからだ。
色々考えながら聞いているとあっという間に抗議が終わっていた。

「どうだ?面白かったか?」

「ええ、面白い解釈がいっぱいあったわ。」

「そうなのか?」

「言葉は生き物だがから。過去の言葉と今の言葉で喋り方や書き方が変わっていくでしょう。だから解釈のズレが現代語訳にする人によって少し変わってしまうの。」

「なるほどな。」

彼は興味深そうに話を聞いてくれる。

「この後は用事あるのか?」

ない、そういえば彼は食事に誘ってくれるだろう。
だが、ふと思ってしまった。
私はなぜこんなにも幸せに暮らしているんだろう。

「ごめんなさい、私急用があって。」

「そうか。」

彼はサラのタブレットに、携帯をかざした。

「俺の連絡先だ。今日中に連絡しろよ。」

そう言い残し、彼はすっと去っていった。
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