【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第26章 執着
「…そうか。わかった」
昔から何かとお世話を焼いてくれるイグニスのこと。寂しそうな声に「二人で相合い傘出来るようになるまで、しばらくの我慢だね」と務めて明るい声を出した。
だって、せっかくのデートだもの。楽しみたいじゃない。
幸いここは賑やかな街インソムニア。キラキラした街並みやお店がいっぱいで自然と気分を上向きにさせてくれる。
「こんなにお洒落な雑貨屋さんやお洋服屋さんたくさんあったんだね」
あちこち目線をキョロキョロさせていると不思議そうに「あまり街中には来てないのか?」と声を掛けられた。
正直この街を私用で出歩いた記憶はあまりない。
小学生の頃から必死に勉強をして過去の失われた警護隊の命に償おうとしていた。
ヴァニラを侍女に迎えて、自分の行いのせいで評価を下げさせるわけにはいかないという責任感も抱いていた。それもあってノクトお兄ちゃんのように夜お城を抜けるなんて以ての外だった。
少し前までは国政に気を向けてイグニスへの想いから目を逸していた。
でも、きっと一番の理由は…
「楽しい思い出を作らないようにしてたのかも…」
だって、離れる時辛いじゃない。とポツリ呟けば、急にぐっと肩を抱かれ驚いた。
見上げた先には奥歯を噛み締め悲しげに眉を寄せたイグニスがいた。自分の発言にハッとして、そんな顔させたかったわけじゃないの、ごめんねと言うより先にイグニスが口を開いた。
「前にも伝えたが、これからはオレと二人で楽しい思い出を沢山作ろう。ここが、オレの隣が、今までもこの先もずっと、グレイスの居場所だ」
力強い声が耳に響き、胸がきゅんとする。
あぁ、どうしてこの人の声はこんなに安心出来るの。落ち着いた、大好きな声。
この声を聞いたら、今の不自由な状況だって期間限定のお忍びの恋として楽しむのも悪くないと思えてしまうから不思議。
少しして肩を抱いた手が離れてしまっても、そこには隣を歩く彼の温もりが残って寄り添ってくれている、告げられた愛情からそんな実感があった。