【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第26章 執着
屋内駐車場から一歩外に出た瞬間、カッと強い太陽の光が肌を刺す。
すぐさまそれを遮るようにイグニスが日傘を差してくれて直接的な暑さが和らいだ。
「ありが…いや絵面おかしいね?」
日傘を持ってくれていることに感謝を伝えようとしてその偏り具合に間抜けな声が出た。
というか、腕を伸ばして私の頭の上にしか傘が掛かってなくてイグニスの頭上にはサンサンと日が当たっていた。偏ってるってレベルじゃない。
日傘持たせて隣歩かせるって、女主と召使いじゃないんだから。私達の関係性にはその側面もあるけれど、少なくとも今は違うと思いたい。
とはいえお城の敷地内で、尚且つイグニスの立場上相合い傘で入る訳にはいかないというのもわかる。
…でもなぁ。さすがになぁ。
「ねぇイグニス、少し前にノクトお兄ちゃんと私が公務中雨に振られた日のこと覚えてる?」
8月、ノクトお兄ちゃんと二人で参加した公務があった。
インソムニア内に新しく出来た劇場のこけら落とし公演に招待され、劇場外観の意匠の説明を聞いていると急に夏の夕立に降られてしまった。
私やノクトお兄ちゃんのところには季節柄予め備えていたのかすぐに警護隊の人達が雨傘を用意してくれたが、劇場関係の人達が慌てて館内に入ろうとする中、一人の男性が脚を悪くされているのか思うように走れない様子だった。
それにいち早く気付いたノクトお兄ちゃんが駆け寄り「ん、」と傘を差し出し戸惑う男性に半ば強引に手渡しした。
そして一歩遅れて追いついた私に「わりグレイス、オレも一緒に入っていいか」と振り返り尋ねた。
もちろんそのつもりだったので、その問いかけを聞くが早いか返事の変わりにすぐさま雨を凌げるよう隣へと立ち並んだ。
するとノクトお兄ちゃんは にこ、と屈託のない笑顔を浮かべて「どーもな」と微笑みスッと私の手から傘を取り代わりに持ってくれた。