【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第25章 証
「さて、オレは食器を洗ってくる」と立ち上がるイグニスを横目で見送りながら、私はじんわりと赤く染まる頬を隠すように下を向いていた。
(気付かれてなければ良いけど…)
イグニスが戻ってくるまでに顔の熱を引かせようと特に用もなくスマートフォンを弄るけれど、こんな状態じゃウェブページの情報もイマイチ入ってこなかった。
結局ポイッとソファへ投げ出して深呼吸を繰り返してやり過ごしていると、片付けを終わらせたイグニスが戻ってきた。
「グレイス、今日の予定は二人きりでゆっくり過ごす、だったな。もし良ければ…っと、こうしていても良いだろうか」
そう言ってイグニスはソファに座って私をお姫様抱っこで抱え上げた。
もちろんグレイスの身体が辛くなければだが、と言い添えるイグニスの眼差しはどこまでも優しく、愛おしさを募らせた。
「ん…大丈夫。
それにしても…イグニスって実はくっつきたがり屋さん?」
「恋人と触れ合いたいと思うのは当然のことだろう? グレイスは違うのか?」
「………違わない」
「では問題ないな」
私の返事を聞いて嬉しそうにこめかみ辺りに鼻先を擦りつけてくるイグニス。
…可愛い。
こんなことを言ったら怒るかもしれないけれど、大好きな飼い主さんに甘える忠犬みたいだ。こう…身体がおっきくて、毛並みも毛艶も良いお利口なワンちゃん。昔、ネックレスという名の首輪もあげたし?
イグニスにゴールデンレトリバーみたいな大きな耳とふっさふさな尻尾が生えた姿を想像して「ふふっ」と笑みが零れた。
「くすぐったいか?」
「ううん。もっとして」
春の陽射しのような温かさを感じる翠の瞳と、ごく近い距離で見つめ合う。
照れたように二人でくすくす笑い合えば、いつもと違ってきっちりとセットのされていないイグニスの柔らかな前髪が揺れて目元に丸い影を作った。
普段より少しだけ幼く見えるこの髪型も、こんな風に抱き寄せて素直に愛を伝えてくれる一面があることも、私しか知らない。
公としてはノクトお兄ちゃんの側付きイグニス。でも、今だけは独り占めさせてね、私だけのイグニス。