【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第25章 証
「イグニス・スキエンティア、ただ今参りました」
間もなくして、スキエンティアと戻ってきた彼の声が聞こえた。
お父さんに対して折り目正しくきちりとした礼がとても絵になっているイグニス。
…きゃあきゃあと黄色い声を上げるご令嬢の熱い視線が一身に注がれていなければもっと良かったのだけど。
国王陛下から直に呼ばれるくらい将来有望な人と話せたからってはしゃぎ過ぎ。イグニスは私のなのに。もうその場から離れたんだから少し黙って欲しい。
「イグニス、遅くまでご苦労だった。
私もグレイスもそろそろここから出ようと思ってな。
お前にはグレイスのエスコートを頼みたい」
「えっ」
「喜んでお受けいたします」
私とイグニスが言葉を発したのはほぼ同時だった。
「こんな所で…良いの?」
「良いも何も、女性、ましてや王女が退場するのにエスコートはあって当然だろう。だが私はその辺の男にさせるつもりはない。
心配しないで、堂々とイグニスの手を取りなさい」
「うん…わかった」
私がそう返事をしたのを見て、お父さんがイグニスに目配せをした。
イグニスはお父さんへ一礼をした後、ホールのフロアから階段を上ってこちらへと真っ直ぐに私の元へと歩を進める。
大好きな人が私を迎えに来てくれる。
周囲に見せつけてやりたいとかそんな邪な感情は置き去りにして、ただただとにかく嬉しくて、堪えきれずに口元が緩む。
公の場で、こんなに顔に感情が出やすいタイプだっただろうか。
抑えなければ、と思っても出来なかった。
「グレイス王女、お待たせいたしました。お手をどうぞ」
私の目の前までやってきたイグニスは、流れるように恭しく手を差し出した。
身につけている礼装も相まって、まるきり映画のようなワンシーンに現実との境が曖昧になる。
でも。イグニスのその目が。「オレだけを見ろ」と言わんばかりに強く愛情を欲した瞳が逃さないとばかりに私を現実に引き留める。
(あ…、)
ドクン、と大きく心臓が跳ねた。
イグニスの心が誰のところにあるのかを雄弁に語りかけてくるようなまなざし。
その目に見つめられて、さっきまで心に溜まっていたモヤモヤ爆弾が一瞬でどこかに飛んでいった。