【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第25章 証
イグニスの隣へ、華やかにドレスアップした一人の女性が割り入った。
それをきっかけに堰を切ったように何人もの女性達が近付き取り囲み、彼周辺の景色があっという間に変わっていく。
会話なんて聞き取れなくったって、ここは女の勘。
そこにいる女性達が、イグニス本人に競い合うように好意を向けているのが手に取るようにわかった。
紳士然とした笑顔を浮かべながら話をするイグニスと、その両脇を固めて楽しそうに肩を揺らす女性達全員に対してドロドロと暗い何かが沸き上がる。
(え…イヤだ、こんなの、見たくない…)
わかってる。イグニスの立場上、礼節を持って振る舞わなくてはいけないのだと。そうでなければお父さんやノクトお兄ちゃんの顔に泥を塗ることになってしまう。
もしかしたら、この場にいる誰かが、将来のノクトお兄ちゃんのお嫁さん…未来の王妃になる可能性もゼロではないし。
(わかっている、けれど…)
寂しさとイライラをぎゅっと凝縮した爆弾がむくむくと胸の中に出来上がる。
どうしようもなく落ち着かない感情を押し殺すようにドレスの裾を震える指でギュッと握る。
見たくないはずなのに、気になって目が離せない。
特に最初にイグニスの隣へと足を進めた女性は何度も見たことがある。あの人は確か…
「グレイス。顔、怖い」
そう一言。隣で待機していたヴァニラに不意に声を掛けられハッとする。
「…あ。ごめん、」
「気持ちはわかるよ」
優しく微笑みかけてくれるヴァニラの笑顔にトゲトゲした心を解され、少しだけ冷静になる。
無意識のうちに眉間に皺を寄せていたし、思い切り奥歯を噛みしめていたのだと今、初めて気付いた。
一つ深呼吸をして表面上は何ともないように表情を取り繕う。けれど、
「正直…モヤモヤする」
「早く公式に発表出来れば良いのにね…あっ、陛下」
そう言われてヴァニラと同じ方向へ視線を向けると、スキエンティアと一緒に高座へ歩いてくるお父さんの姿が見えたので立ち上り、腰を落ち着けた辺りで声を掛けた。
「お父さん、脚は大丈夫?」
「あぁ、心配してくれてありがとう。
グレイスこそ、試験あけで疲れてるんじゃないのか? もう時間も遅い、帰って休んでも構わないぞ」
「あ…うん。まぁ、そうなんだけど…」