【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第25章 証
「相手方はとても高貴な方でいらっしゃいますので、全てはあちらの御心次第ですが、私の気持ちはそこから移ろうつもりはありません」
内々に交際と結婚のお許しを頂戴しているとはいえそれを口にするわけにもいかずこう返せば、何だまだその程度の段階かとわかりやすく目の色を変えられる。
そこからは怒涛の如く繰り広げられる自分と自分の娘の自慢話。
家柄に始まり、事業の成功談、(グレイスが聞いたら特に気を悪くしそうな)移民の血が混じっていないことを良しとする血筋の話、保有資産について等々。
人柄うんぬんを抜きにして、婚姻を結ぶことで生じるメリットだけを羅列するような話が聞いていて愉快でないのは間違いないが、まだこうして純粋に自分や家族の価値がいかに高いのか声高に話すことは、イオスの海ほどに広くした心で見れば一種の家族愛の現れでもあると受け取れなくもないのでまだマシな方だった。
中には「高貴な方が相手だと気苦労もあるでしょう。その点ウチとの結婚でしたら気兼ねなく…」と自らを卑下してくる者もいた。
自分自身だけでなく、娘までを勝手に下げて相手に献上しようという親の気が知れない。
そもそも、「心に決めた女性がいる」と口にした人間に対してあれこれと条件を並べ、「それなら会ってみようか」というような男のところへ嫁がせようという感覚も全く理解出来ない。
いつか将来、グレイスとの間に子どもが出来たとしたらオレは絶対にそんなことは…と、話が飛躍してしまったがとにかく。
「私は、その女性が多くのものを持っているからお慕いしているわけではないのです。純粋にその方の心に深くひかれた故ですので、例え報われなくても、仮にその身一つで来ることになろうとも構わないんです。
その方だけのことを考え、その方のことだけを愛して生きていきたいんです。ご理解下さい」
そこまで言い切るとようやくわっと場の空気が盛り上がり「ははは、いやぁ若いねぇ」「懐かしいですなぁ、私も昔は…」とようやく話題の矛先が変わって安堵した。
その直後。
「イグニス様のお話、私も一緒にお聞きしたいです」
と一人の女性が隣へと割り込んできた。
心の中で、先程よりもはるかに大きなため息が出た。