【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第25章 証
--8月30日、夜 ノクティス王子誕生パーティ会場--
ノクト17歳の誕生日当日。
パーティは華やかに飾られた城のバンケットホールで行われた。
レギス陛下やノクト本人からの挨拶から始まり、皆で乾杯をした後来場者と最低限のやりとりを済ませて間もなく、ノクトを会場の外へと連れ出してやる。
自宅マンションまでの送りを頼んである警護隊員に引き渡し、オレは再び会場へと足を向けた。
その去り際、ノクトに「悪いなイグニス」と声を掛けられた。
その場で振り返り、このタイミングでその言葉を掛けられた真意を測りかねていると「お前も一緒に抜けさせてやれたら良いんだけど」と言葉が続いた。
あまり社交の場が得意ではないノクトに代わって招待客の相手をするのは今に始まったことではない。
それでもあえて言うということは、グレイスとのことを考えてくれているのだろう。
次期国王としての自覚はまだ薄いにしても、心根の優しいノクトの一面に触れて心が和らいだ。
「気にするな。これもオレの仕事だ」
グレイスとの未来の為にもこれまで以上にきちんと仕事はしなければならない。
(ノクトの言う通り、早く切り上げられると良いのだが)
やや非現実な希望的観測を抱きつつ会場に戻り、何よりも最初にグレイスを視界に捉えた。
どうやら、ヴァニラを伴いながら招待客に挨拶をしている途中のようだ。
ルシスで名を馳せる企業の重役、著名人が列を成しているところを見ると、あちらもそれなりに時間がかかりそうではあった。
パーティの為に化粧やヘアセットをしたグレイスは、普段よりいくらか大人びて見えた。
王女という圧倒的上位な立場にも関わらず不遜な態度は出さずにこやかに笑いかけ、そつなく言葉を返していく様は、美しく品と知性のある女性そのもので遠くからでも輝きを放っていた。
(だが…素顔のグレイスはもっとコロコロと笑ったり、照れたり、時に扇情的だったり…表情豊かで魅力的だ)
儀礼的な笑顔を向けているだけだとわかりつつもざわつく腹の底を抑える為に、オレだけが見ることの出来るグレイスを頭に浮かべ何とか自分自身を宥めた。
間もなくしてオレも上等そうなパーティスーツを身に纏った初老の男性に声を掛けられ、仕事用の人当たりが良さそうな笑顔を作ってからそちらへと振り向いた。