第24章 カレシとカノジョ

約束した土曜日の朝。

イグニスが合鍵で玄関ドアを開けた気配を感じて、迎えに行こうとリビングを出る。

「おはようマチコ。出迎えありがとう、だがリビングで待っててくれていいんだぞ」

「いーの、私が来たくて来てるんだから。
…あれっ？　イグニスそれどうしたの？」

会いたくて待ちわびていたその人の手元には、茶色の紙袋と、街中でよく見かけるレンタルショップの黒い袋が下げられていた。

「あぁこれか？　今日は家で過ごす予定だから寛ぐ時につまめるように菓子を作ってきた。
あとはいくつかDVDを借りてきたんだ。グレイスが気にいるのがあったら一緒に観よう」

「わぁ、ありがとう！　さすがイグニス、気配り上手」

いつも二人の時間を充実させるために色々準備してくれて嬉しい。
そしてお菓子を『買ってきた』じゃなくて『作ってきた』っていうのがほんとイグニスらしい。


リビングのソファに座り、DVDのタイトルを見せてもらった。
有名なアクション映画、SF映画、恋愛映画など色んなジャンルの中に、昔のアニメーション映画を実写化したものがあった。

「あ、私これ観たいな」

そのDVDは、願い事を３つ叶えてくれるランプの魔人や空飛ぶ絨毯が登場する夢のある作品を最近実写化したもの。
観たいと思って気になってたんだよね、もうレンタルスタートしてたんだ。