【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第24章 カレシとカノジョ
手を繋いだままイグニスは車のトランクを開けて、少し大きめな鞄を取り出した。
「イグニス、それ何が入ってるの?」
「あぁこれは今日の昼飯にと思って弁当を作ってきたんだ。あとで一緒に食べよう」
…えっ。
サラリと言われた言葉に一瞬フリーズする。
「えぇぇぇ!? ご、ごめん私何も準備してなくて、イグニスに任せっぱなしで…」
まさかイグニスがお弁当用意してくれているなんて、完全に予想外だった。いや、むしろイグニスならやりそうだけど! レストランもある公園だからてっきりそこで食べるのかなって思ってたんだよね…。
「気にするな。オレがやりたくてやったことだ。行こう」
せめて荷物だけでも持とうかと言ったけど当然のように断られ、
そのままイグニスに手を引かれて進んでいくと、看板に「ハイキングコース」と書いておるのが見えた。
歩く道すがら、その脇に咲いている紫陽花を楽しめるような配置になっているみたい。
コースは所々頭上を背の高い木々に覆われて日陰になっており、とても涼しい場所だった。
「ん~~ひんやりとしてて、空気も綺麗な感じですごく気持ちの良い場所だね」
「そうだな。普段人も建物も密集した街中で過ごすことが多いから、より一層そう感じるな」
日陰の部分は涼しく、反対に陽のよく当たる道の脇には色づいた花を零れんばかりにたっぷりと抱えた紫陽花たちが多彩な華やぎをもってそこに佇んでいた。
「紫陽花も、本当に良いタイミングだったみたいだね。色鮮やかですごく素敵。
こっちは青…いや薄紫かな? あ、向こうはピンク色になって咲いてる」
「どの花も色合いが違って美しいな。
ところでグレイス、紫陽花の色が咲いている場所によって違うのはなぜか知っているか?」
「えっ、そういえば…何でだろう?」
「それはな、紫陽花の植わっている土壌のpH値…酸性やアルカリ性の強さによって色が変わってくるんだ。
だからこんな風に花の色味がグラデーションになったりするそうだ」
「そうなんだ…!
さっすがイグニス、よく知ってるね!」
「はは、実を言えばグレイスをここに連れてくる前に調べたことなんだが、そう言ってもらえて嬉しいよ」