【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第24章 カレシとカノジョ
二人並んでキッチンで調理をしていると、何度もスマートフォンにメモをしたレシピや調理手順を真剣に確認しているグレイスの様子が目に入った。
普段、パエリヤを一人で作って食べることはまずないだろうから、今日の為に練習したり調べたりしてくれた様子が伝わってきてここでも嬉しく思う。
その努力に手出しをしないように、オレは食材の取り出しや洗い物の作業を請け負った。
グレイスが作ってくれる料理というだけで喜んで食べたくなるものだが、
隣から聞こえてくる魚介の焼ける小気味良い音、香辛料を含めたスープを使って米を炊くフライパンから漂う匂いが、より一層食欲を唆る。
最後に食材の旨味たっぷりのスープがしっかりと煮詰まるよう火にかけてから、「お待たせ! 完成だよ!」と声がかかった。
出来立ての熱さを伝える湯気がまた視覚的にうまそうに見えて、フライパンごとテーブルへと運んだ後、
グレイスが「せっかくだから、この間買った星空柄のお皿を取皿に使おうか」と大きめなスプーンと一緒に運んできて、
「はい、イグニス。どうぞ」とオレの大好きなグレイスの優しい笑顔と一緒に取り分けた料理を渡してくれた。
「…、ありがとう」
これは…世間一般的には特筆するまでもないありふれた光景なのかもしれないが、
二人きりで過ごしてもぎこちない壁を感じることなく、グレイスと何気ない日常のワンシーンを送るということがオレにとっては随分と長い間お預けをくらっていたように感じて…一瞬幸せに呆けていた。
一方でグレイスは料理の出来が気掛かりなのか、オレの沈黙は料理の見た目に注視したと勘違いしたようで「上手に出来てると良いんだけど…」とやや心配そうな顔を浮かべていた。
受け取った料理は、トマトやパプリカ、焼き色がついた海老等色とりどりの具材と、サフランで色付けられた米の黄が鮮やかで、濃紺の皿によく映えていた。それに加えて出来立ての湯気と共に香ばしい匂いが鼻腔をくすぐってきていて、何も心配することはなさそうだ。