【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第24章 カレシとカノジョ
そんな滑稽な葛藤をしてしばらくした頃。
「ありがとうイグニス、もう大丈夫。
そろそろお昼ご飯の準備するね」
腕の中のグレイスが落ち着いた様子で声をかけてきた。
オレ自身も…何とか目立たない程度には静まったようで心の中で一人安堵する。
オレの膝から床へと降りたグレイスに「イグニスはゆっくりしていてくれて良いからね」と言われたものの、料理の手伝いをしたい旨を返した。
「ソファーでゆっくりさせてもらったとしても、結局目はグレイスを追ってしまうだろうからな。
それなら近くにいられる方がオレも嬉しい」
そう理由を告げると「ぇ、えぇっ!?」と驚いた声を出した後、両手で顔を覆って「もう…イグニスってば」と呟く声が小さく聞こえてきた。
オレの些細な一言に毎度可愛らしい反応を返してくれることを嬉しく思いながら、恥ずかしがっているグレイスの背中をそっと押してキッチンへと二人足を進める。
今日はどんなメニューを作ってくれるのかと尋ねると、ニコリと大きく笑って、シーフードパエリヤだと教えてくれた。
「見た目も華やかでおもてなしに良いかなと思って。
それに、イグニス海鮮系好きだったよね?」
楽しそうに期待を込めた目で見つめてくるグレイスを愛しく感じ、彼女の頭を撫でながら
「あぁ、そうだな。覚えていてくれて嬉しいよ」
と答えれば、「良かった!」と満面の笑みを返すグレイスが目に映った。
…きっとこの日為に、何を作ったらオレが喜ぶのかあれこれ考えを巡らせたり、準備をしてくれたのだということが、目の前の安心したようなグレイスの笑顔から伝わってきた。
(大切な女性が、オレの為に…なんという僥倖だろうか)
機嫌良くキッチンへと足を運ぶグレイスの後ろ姿を見ながら、ひとりでに胸が熱くなる感覚をオレは心の中で噛み締めていた。