【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第5章 衝撃
「さ、お部屋に着いたよ。まずは座って? 何か温かい飲み物でもいれようか?」
「ありがとう…でも、今はいい…。
それよりも今は……、傍にいて」
イグニスによって繋がれた手を きゅ、と掴みうつむき答えた。
「わかった。
グレイスの気持ちが落ち着くまでここにいるから。安心して」
イグニスの優しい声と言葉がグレイスの胸に響いた。
それと同時に、このタイミングでのイグニスの優しさはグレイスの心を締めつける。
イグニスは、兄ノクティスの側近として常に近くにいてくれる存在。
ということは、彼の命が危険にさらされる可能性は、ジェイクの父親やその他の警護隊員たちと何も変わらないではないか。
周りに比べ、随分と大人びているので勘違いしそうになるが、グレイスと大して歳の違わない人だ。
イグニス本人の意志だけでこの立場になったわけでもないはず。
自分や、自分の家族のせいで危険なところにいさせていいはずがない。
今日の出来事を伝えなければ。そうグレイスは強く思った。
「あのね…イグニス…。
私、イグニスに言わなくちゃいけないことがあるの…」
先日の兄の警護に、クラスメイトの父親がいたこと。
そのせいで彼の父親が亡くなってしまったこと。
…人殺し、と言われたこと。
ここに仕えるということは常に危険が伴うということ。
そして…
「だから…イグニスはここを出て、普通の生活に戻った方が、いいと思っ…て。
こんな、大事なこと、今まで気付かなくて…ごめ…ごめんなさ…ひっく、…ぐす…」
クラスメイトの父の死の衝撃と、なじられた悲しみと、心の支えであるイグニスを自ら手離すことを覚悟した寂しさと…
色々な感情が混ざって、そこから先は涙で言葉にならなかった。