第23章 夢

「それで、一年前に思いの丈を伝えたということか」

「はい。
当時のグレイス王女は、ルシスの為に他国へ嫁ぐというお考えで、私の気持ちには応えられないとはっきり仰られました。

当初、グレイス王女をお慕いする気持ちだけはそのままに、グレイス王女のご決断を尊重するつもりでおりました。
ですがどうしても諦めきれず、『もう一度だけ』というつもりでこの一年は特に剣術の鍛錬も、将来のルシスをノクティス王子と、また、グレイス王女とも担っていけるよう懸命に様々な分野での知識や見聞を身につけてきたつもりです」

「なるほどな。ここ最近、私の耳にも様々な方面からお前の良い評判は聞こえてきていた。
そこにはそのような理由があったのだな」

「それは…身に余るお言葉でございます。

自分に出来る限りの努力をし、ルシスの未来の為に尽力されたいというグレイス王女のお気持ちに応えられるように、
ノクティス王子のお側付きに任命してくださったレギス陛下のご期待に添えるような…いえ、ご期待を超える程の結果を必ずやお見せすると誓います。

レギス陛下、どうか私にグレイス王女と結婚を前提として共に過ごすことをお許しいただけますか」

しっかりと決意の籠もった声がすぐに隣から聞こえてくる。ちらりと横を見やれば、見惚れる程凛々しく真っ直ぐ前を見つめるイグニスの横顔。

その姿はこれまで真摯に積み上げた努力の結果からか、一国の王を前にしても引けを取らない実に堂々たるものだった。
こんな人に一心に想ってもらえるなんて、一体どれ程の奇跡と幸せだろうか。

「ふむ…ここまでの話を聞いてスキエンティア、お前から何か言いたいことはあるか？」

「ワッ、ワタクシですか…！？

な…何と言いますかその…、私の甥がとんでもないことを言い出して申し訳ありません…」

「ふっ、なんだそんな情けない声を出して。

イグニスがノクティス王子の側付きになったのはそもそもお前の推薦からだっただろう。
どこか問題のある奴を推薦したとでも言うのか？」

「い、いえ…そのようなことは決して…！

ただ、まさかグレイス王女とこのようなことになるとは…」