第23章 夢

「あのね、私がカーバンクル好きになった理由はね…

同じ、だから。

カーバンクルの優しい緑と、大好きなイグニスの優しい緑の瞳の色が、同じ…だから」

「……な…」

あっけにとられているオレを見つめて、グレイスは続ける。

「だから…カーバンクルのぬいぐるみ、いつも傍に置いてて…

そうしたら、いつもイグニスが傍にいてくれるような気持ちになれた。

未来のことを一人考えてて辛い時も…私はいつもイグニスから元気と勇気をもらってたよ。

いつも…ありがとう」

頬をかきながら恥ずかしそうに笑った後、それでも何も言葉を発さないオレを見て不安になったのかグレイスが慌てて弁解を始める。

「ご、ごめん、やっぱりこんな理由気持ち悪いよね、
忘れて！　…きゃっ！？」

パーカーに埋めるように顔を隠すグレイスを思いきり抱きしめる。

「グレイス…。グレイス、オレこそ、だ…。

グレイスの存在や笑顔にオレが今までどれだけ支えられてきたことか…」

グレイスの身体を一度離し、二人の間に挟まっていたパーカーを引き抜き、再度抱きしめる。

「グレイス、聞いてくれ。
オレがここまで努力してこられたのは、もちろん自分の使命や大切な友人でもあるノクトの為もあるが、心優しくてかけがえのないグレイスを守りたいと思う気持ちもあってこそだ。

そして、これからも…グレイスが隣にいてくれればオレはどんな困難だって打破してみせる。

グレイスが昔オレに贈ってくれたブルーローズの花言葉の『夢叶う』のように、数百年叶わなかった帝国との戦争終結だって、絶対に実現してみせる。
そうして、グレイスがずっと危惧しているルシスの未来に平和をもたらして見せる。

こんな大それたこと、もしかしたらただの夢や寝物語に聞こえるかもしれない、
だが、夢で終わらせるつもりは毛頭ない。
グレイスが心から笑ってオレの隣にいられるようになるためなら、どんな無茶な試練があろうとも、何度だって挑戦する。

だからどうか…オレの隣で、オレと一緒に同じ夢を見てくれないか…？」