【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第22章 FINAL FANTASYワールド
気持ちを大きく波立たされたまま、花火の終わりを告げるアナウンスが流れてきた。
それはもちろん聞こえているし、周りの人達が一斉に動き出したのを見れば一目瞭然だった。
それでも私はどうしようもなく胸が痛くて苦しくて、自分勝手だなとわかりながらもイグニスの手を離せずに、ずっとその場に座り込んでいた。
やがて周囲に人がいなくなってもイグニスは何も言わずずっと抱きしめていてくれたけど、その空気を揺らすように ヴヴッ とメッセージの着信を知らせる振動音が短く響いた。
「…今のは恐らく、プロンプトからだろう。
行かなくてはな」
「………うん」
この手も、温もりも離したくなくて…イグニスの声の後、たっぷり三拍は間を取ってからようやく返事をすることが出来た。
イグニスに絡めていた指の力をそっと抜くと、それを合図にしたかのようにイグニスが一歩先に立ち上がり、そのまま手を握って引き上げてくれた。
私が立ち上がった後も、手を離そうとはしないでいてくれて、地面に敷いていたハンカチを空いているもう片方の手で拾い、イグニスらしくもなく片手でぐしゃぐしゃとまとめてポケットへと押し込んでいく。
ハンカチを畳むほんの少しの時間も手を離したくなかったのかと思わせてくれる行為に、嬉しさから涙がじわりと目尻に浮かんだ。
メッセージはやはりプロンプトからだったようで、『入口近くの大きなお土産屋さんの前で待ってる』とのことだ。
「あまり待たせても悪いし、そろそろ行こう。
足元、気をつけるんだぞ」
「うん…ありがとう」
ついさっきまで夜空を見上げる為に多くの人達が集まっていたというのに、それぞれみんな家路に着いたり、最後のアトラクションを乗りに駆けだしていったり、お土産を見に行ったりで、随分人気が少なくなったように感じる。
人々の喧騒からは切り離された空間で、園内のBGMを遠く耳にしながらイグニスと繋がれた二人の手を見つめる。
いつの間にこんなに差が出来たのだろうかと思うくらいに大きくなったイグニスの手にすっぽりと包まれている自分の手。
その手の中で少し指先を動かしてイグニスの手のひらの感触を確かめてみると、随分と硬く、ぶ厚い手になっていることがわかる。
大人の男性らしい、大きくて、逞しい手だ。