【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第21章 新生活
自宅の洗面所にてそんな薄ら寒いやりとりが行われているとは露知らず、私は料理の続きをするために再びキッチンへと戻ってきた。
「イグニス、お任せしちゃっててごめんね」
「いや、気にするな。もう大分出来上がっているしな」
テーブルを拭いたり、先に作っておいたサラダを出したりしていると三人が戻って来たので、もう少しソファーで待つように伝えると、イグニスに声を掛けられる。
「グレイス、一つ味見を頼みたいのだが…オリーブオイルをベースにドレッシングを作ってみたんだが、どうだろうか? もう少し塩かレモンを足した方が良いだろうか」
声がした方を向くと、小皿からスプーンですくって「あーん」で味見をさせようとしようとしているイグニスがいて思わず目が見開く。
(え…み、みんなが戻ってきたこのタイミングで…?)
見られたら少し照れくさい感覚もあるけれど…
反対に、イグニスと親しくしているところを誰かに見られたい、見せたいという欲求が心に存在するのを確かに感じて、私はそのまま口を開けた。
「ん、あーん…。
…うん、味はこれでバッチリだと思うよ、美味しい!
あ、そうだ、私もイグニスに味見してもらいたいの。
この間言ってたトマトソースなんだけど、どうかな?
お口…あーん、して?」
ソファーの方から食い入るように見てくるプロンプトと、ニヤニヤしてるグラディオの視線を感じながらも、あえて小皿ごと渡さず私もスプーンですくってイグニスの口元へと運ぶ。
「そうか、ならこのままテーブルに出すか。
ん、あーん…
うん、トマトの酸味が程よく和らいでいて食べやすい。
上手く作ったな」
「本当? 良かった」
互いに食べさせあい、見つめあい、微笑みあう。
『二人きりの時にやれよ!』と言われそうなことを見られているとわかっていながらあえてやるのは、普段抑え込んでいる独占欲の反動かな。
味見を終えて身体の向きを正面に戻すと、よりハッキリとプロンプト達の姿を視界に捉えることが出来た。
(恥ずかしいから視線は合わせないけど…それでもプロンプトとグラディオにめっちゃこっち見られてるのわかるな…
…ん? プロンプト、ソファーのクッション抱き抱えるふりしてニオイ嗅いでない…? やたらとクッションが顔に近いし微妙に顔動いてるような…
いや、まさか…。き、気のせい…だよね…??)