【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第21章 新生活
食事や片付けをしながらそんな風に楽しくお喋りしていると時間が経つのはあっという間で、気付けばもうすぐ21時になろうとしている頃だった。
「おっと…もうこんな時間か。
すまない、一人暮らしの女性の部屋なのに、随分と遅くまで失礼した」
「ううん、夕食に誘ったのは私だし、気にしないで。久しぶりにイグニスとゆっくりお話出来て楽しかった」
「あぁ、オレもだ」
イグニスがにっこりと笑って、大きくて温かい手で頭を撫でてくれた。
今日、すっごく久しぶりにいっぱいお互いの体温に触れ合えたな…。
この温もり、離したくないな…。
『また、いつでも遊びに来て』って気軽に言えたら良いのに。
二人並んで玄関へ歩きながら、そんなことを考える。
でもそうハッキリとは言えないから、
「また、今度の連休に会えるの楽しみにしてるね」
って、ささやかながら、いつでもあなたに会いたいと思っている気持ちを言葉に込めて伝えた。
「そうだな…また次会う予定が決まっているのは、嬉しいものだな」
「!! …うん!」
同じ気持ちを返してもらえたことが嬉しくて、前を向いていた視線をイグニスの方に向けると、柔らかく目尻を下げた笑顔のイグニスと目が合った。
(イグニスもそんな顔、するんだ…)
口に出してそう伝えたかったけど、恥ずかしがって見せてくれなくなったらイヤだから、ギリギリのところで言い留まる。
(幸せ…だな)
心がぽかぽかと温かくなるのを感じて幸福感に包まれると同時に、一層別れ際が寂しくなる。
(せめてここで…『いっぱいぎゅーってしてからお見送りさせて』って言えれば良いのに…)
目の前にはピカピカと光を放つ程に磨かれた革靴に足を入れるイグニスの背中。ここに後ろから抱きつけばきっとイグニスは何も言わず抱きしめ返してくれる。
でも…一度でもそんな風に曖昧に理由もなくイグニスの体温を求めてしまったら、きっとこの先自制出来なくなるし、余計に自分が辛くなる。
だから必死に自分の左手で自分の右手をギュウと押さえ込む。