【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第21章 新生活
オレの言葉に反応して、グレイスの手の動きが止まるのを感じる。
あんな風に理屈っぽくオレとの未来を拒否をされたグレイスからすれば、『昔から』というのは意外なのかもしれないな。
「過去に、グレイスの気持ちを一方的にシャットアウトするようなことを言ってすまなかった。
あの頃のオレは、王子の側近という立場なのに、王女のグレイスへ特別な感情を持つなんて許されることじゃないと思って、自分を戒める為にもあえてあんなことを言ってしまったんだ。
恐らく、グレイスが思っているよりずっと前から、オレはグレイスのことを異性として好きになっていたよ」
「そう…なんだ…」
戸惑っている様子が、オレに包まれているグレイスの手から伝わってくる。
オレがグレイスを特別大切にしたいと思ったのは…ノクトがシガイに襲われて、クラスメイトに酷いことを言われて落ち込んでも尚、ノクトやオレのことを心配する優しさを見せた時。
この心優しい人を守れるように、オレがより強くなろうと決心させてくれた。
だからオレはこれまでのどんな努力も、求められる高いハードルに対しても辛いとは少しも思わなかった。
オレがしっかりとノクトの支えになり、引いてはグレイスが次世代の王家を心配せず幸せな人生を歩めるようになるために己を高めてきた。
ただ、オレ自身の気持ちと、グレイスのオレへの気持ちの大きさにきちんと向き合わずにいたせいで、王女としての責任感との板挟みでここまで辛い状態にさせてしまったのは誤算だったが。
少しずつ、だが確実にすれ違った想いを手繰り寄せていきたい。
「あぁ、そうだ。今日はオレを頼って呼んでくれてありがとう。
こうして昔を思い返しながら、この想いを伝えられただけでも嬉しいよ」
「うん…私も、聞けて…嬉しかった…。
ありがとう…」
そう応えるグレイスの声にほんの僅かに湿り気を感じ、そっと彼女の頭を撫でると、心なしか甘えるように頭を後ろに預けてくれたような気がして…思わず笑みが零れた。