【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第21章 新生活
どれくらいの間そうしていただろうか。
密着した腕と背中部分が汗ばんできたのを感じて少しだけ動かした。それを終わりの合図と勘違いさせてしまったのか、それがきっかけとなってイグニスの身体が離れていってしまった。
(あっ…しまったな…。迂闊に動いたりするんじゃなかった。
今の私達二人は、会うにも、抱きしめあうのにも、理由がいるのに…)
イグニスが離れたことによって生まれた隙間を寂しくぼんやり見つめていると、再びあのネックレスが目に入り、それをそっと指でなぞる。
「ねぇイグニス…イグニスも私に何かつけてくれて良いよ…?」
「オレが、か?
…いや、一介の従者であるオレがそんなことをするのはさすがに気が引けるな…」
「………そう」
私も…イグニスのものになりたいのに…。
例え二人だけにしか分からない形や物でも良いから、あなたとは特別な仲なのだと主張してほしいのにな…。
「すまない…どうかそんな寂しそうな顔をしないでくれ。グレイスからあの電話で誘いを受けた時、どれ程嬉しかったことか。
こうして、今日のようにオレを頼って傍に置いてくれていることがグレイスからの愛の証であり、オレにとっての一番の幸せなんだ。
だから…オレの気持ちはこれで示させてくれ。
…ちゅっ」
「えっ…!?」
イグニスが私の左手をそっと取り、『何する気なんだろう?』と黙って挙動を見守っていたら…まさか、そのまま私の左手の甲にキスを落としてきた。
動揺する私を目を細めながら愛おしそうに見つめ、イグニスは私の手を握ったまま、もう片方の手を自身の胸に重ね恭しく言葉を続ける。
「『だいすきのちゅー』は出来なくとも…手にするキスの意味は、敬愛。
これはお傍に置いていただいている感謝をグレイス王女にお伝えするもの。
どうか、この口づけはお許しいただけますか…?」