【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第21章 新生活
(あぁ…あったかい…。
こうして抱きしめあうのはいつ以来だっけ…あのダンスの夜以来だからもう一年ぶりくらいになるのかな…)
久しぶりにイグニスから与えられる熱と多幸感に抗うことはしたくなくて、『離さないで』の意思表示をするように腕に力を入れて抱きしめ返す。
それに応えるようにイグニスも顎先や鼻先を私のこめかみや髪の間にスリスリと擦りつけてくる。まるで動物のマーキングみたいだ。
そんな行為も愛おしく感じて受け入れている、甘い蜜に溺れる様なただただ最高に幸せな時間。
(ずっと、こうしていたい…。
誰にも遠慮することもなく、私の心はイグニスのもので、イグニスは私の大切な人だって言いたい。)
ふと、ヴァニラや父、兄に言われた言葉が頭に浮かぶ。
(イグニスと幸せになりながら、今まで尽くされてきたことへの恩返しやルシスの為に二人で務めを果たしていくこと…。
そんなの、良いのかな…? ノクトお兄ちゃんは『オレに遠慮するな』って言ってくれたけど、私だけ、恵まれ過ぎじゃない?
お父さんが探しなさいって言った王女としての道も、いくらなんでもこんな選択をしたなんて聞いたらびっくりするんじゃないかな…)
薄く目を開けた先に揺れるネックレスが視界に入った。
そこからイグニスの愛情を感じつつも、いつもイグニスと一緒にいられるそれにまで嫉妬をして、ため息交じりにチャームを指先でカリカリといじった。
「…なんだ? 考え事か?」
「あ、ごめん…ちょっと」
考えてたのはイグニスとのこと、なんだけどね。
「後にしないか。
今はグレイスとこの幸せな時間と温もりを目一杯共有したい」
「…そうだね。そうする」
ネックレスに触れていた指を離し、再びイグニスの背中に腕を回すと、
「いい子だ」
と満足そうなイグニスの声が優しく鼓膜を揺らす。
その声はズルい、って言いたかったけど、きっとまた赤くなっている顔を見られるのが恥ずかしくて、ぎゅっとイグニスの胸に顔を埋めることにした。