【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第19章 未来の王と、その軍師
「それは…っ」
ノクティスの頭に数日前の記憶が蘇る。
期末テスト初日の帰り道、友人のプロンプトと偶然見かけた街頭の大型ヴィジョンに映し出された公務中の父の姿。
それは、見慣れない杖を手にしていたものだった。
それを見た瞬間、大きな焦燥感や喪失感に襲われ、
試験勉強という目の前にあるやるべきことからも目を背け、遅くまでゲームセンターで無為に時間を過ごし、
帰宅後には自身の側近から今まさに受け止めきれない不安と悲しみに沈んでいる心と、目を背けたい現実を真正面から突きつけられ噛みつくような態度で返事をしてしまった。
優しく、自分を愛してくれる父を喪うのは考えることすら嫌だった。
自分が次期国王に就任するというのは、そのかけがえのない父が亡くなった時。
だから、周りが次期国王として向けてくる期待と責任と向き合うのが嫌だった。
さっきまで、どうしてこんなにグレイスが自分の気持ちを押し殺してまで一人険しい道を進もうとするのか理解に苦しんでいたノクティスだったが、
言葉を変えてハッキリと未来の兄のことを憂うグレイスの訴えを聞いてようやく得心が行った。
父想い・兄想いであるこの妹が、
父を早くに喪うのはもちろん、兄である自分が早くに老いていく姿を何もせず眺めてなどいられない。その強い願いが根底にあるのだと。
(親父がいなくなるのは辛い。でも、今のまんまじゃグレイスは親父だけでなくオレのことも早くに見送らなきゃいけねーかもしんねーのか…
そりゃ…辛ぇわな。)