【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第18章 父の思い出
「…やはり、見合いは気が乗らないか?」
完全にナシ判定を下した私の顔を見て、お父さんが確認するように声を掛けてくる。
「あ、いや。そう言う訳じゃないよ。
お見合いが、じゃなくて、この人に気が乗らないってだけ。
も~話持ってくるならもっとルシスの国益になるような人にしてよ。
テネブラエや帝国のお偉い血筋の人とか。
大丈夫、王女として期待されてる役割はちゃんとわきまえてるから」
お相手はルシスを代表する大企業、ルシス食品創業家のご長男だった。
そこと繋がりを作って難民への食料提供を促すって考えもなくはないけど、それじゃいまいち。やっぱり原因の大元を何とかしなくちゃ。
パタン、と身上書を閉じてテーブルに置き、自明のことといった顔でそう返事をすると、お父さんの目が驚いたように丸くなった。
「そうなのか? 私はてっきり…あぁいや、何でもない。
…だが、もしもグレイスがそんな遠くへ行ってしまったら私は寂しいぞ?」
「それは私もだよ! でも、それで少しでも帝国との関係性が変わるきっかけになれば私は嬉しい。
お父さんが命をかけて守っているルシスを、私も大切にしたいし、守りたい。
『民を守ってこその王』の理念に恥じない、お父さんのその優しくて格好良い背中を見て…子どもの頃からずっとそう思ってるよ」
「グレイス…」
「グレイス王女…私、感動致しました…」
「ちょ、ちょっと、何!? やめてよ二人共!」
マンガで言うと、『じ~~~ん』っていう効果音に合わせて、背景でキラキラが飛んでるような空気になったのを感じて思わず大きな声が出る。
すっごく恥ずかしくなるし、スキテンティアに至っては涙ぐんでる気配すらある…どんなリアクションしたらいいかわからなくなるから、どうにか堪えてほしい。
「いや…すまんな、グレイスがそんな風に見てくれていたのかと思うと嬉しくてな。
ありがとう、グレイス。
未来を見据えて行動することはもちろん大切だ。
だが、同時に今を大切にすることも同じくらい重要なことだよ。
子どもの頃にしか出来ない事、心を許せるかけがえのない人間関係を築く事。
大切な人達が増えると、『王家の人間だから、使命だから』という理由以外で自然とその人達を守りたいという気持ちが湧いてくる。それがきっといつかグレイス自身の強さになる」